『破風』©Emperor Film Production Company Limited

香港アクション映画の鬼才ダンテ・ラムの新作『破風』

苛烈な人間ドラマと犯罪ジャンルを融合させた『ビースト・ストーカー/証人』『密告・者』などで知られる香港のダンテ・ラム監督の新作は、総合格闘技を扱った近作『激戦 ハート・オブ・ファイト』に続いてのスポーツ路線。

今回はサイクル・ロードレースを題材に、自転車に人生を捧げた若者3人の熾烈な競争が描かれる。

物語の舞台となる台湾各地でロケを敢行し、空撮ショットなどをふんだんに織り交ぜて映像化されたレース・シーンは、異様なテンションの高さをみなぎらせて期待感を煽るに十分。

観ているこちらの胸がアツくなるどころか、焼け焦げるような熱血青春映画に仕上がっているはずだ。

コンペティション

映画祭のメイン部門であるコンペティション部門には、世界的に名の知れた巨匠や鬼才ではなく、“これから”の中堅や若手監督の作品が並ぶ。

それゆえに実際に観てみないとわからない未知数の度合いが高くなるのは必然だが、近年は作家性の強いアート系作品からエンターテインメントとしてしっかりと成立している作品まで、幅広いタイプの映画が出品されている。

いわゆる“外れ”が多かった一時期よりも明らかにクオリティが高まったし、世界中のさまざまな地域からバランスよく選出されている。プログラム・ディレクターの努力の賜物だろう。

 

『ガールズ・ハウス』

イスラム圏特有の問題をあぶり出す『ガールズ・ハウス』

まず興味をそそられるのは、イランから出品された『ガールズ・ハウス』(シャーラム・ホセイニ監督)。

イラン映画というと、以前は子供の健気さや純粋さを描いた素朴な味わいの作品が日本でも人気を博したが、アスガー・ファルハディ監督(『彼女が消えた浜辺』『別離』)の登場以降、都市部を舞台にした優れた現代劇が目につくようになった。

結婚式を翌日に控えた花嫁が謎の死を遂げたことで物語が動き出す本作は、友人であるふたりの女性が謎解きに乗り出すミステリー仕立てのドラマ。

イスラム圏特有の問題をあぶり出す社会派ものの側面を秘めているであろうことは容易に想像がつくが、はたしてどのような方向性で“映画的な魅惑”を打ち出しているのか。

その点が本編を観てのお楽しみとなりそうだ。

 

『地雷と少年兵』©Danish Film Institute

戦時下の史実をベースにしたドラマ『地雷と少年兵』

デンマークのマーチン・ピータ・サンフリト監督が撮った『地雷と少年兵』は、戦時下の史実をベースにしたという設定が異彩を放っている。

第二次世界大戦直後、デンマークの海岸沿いに埋められた大量の地雷を除去するために、捕虜であるドイツ兵たちが駆り出される。

地雷を埋めた側であるドイツ兵に責任を取らせるのは当然の理屈のようにも思えるが、それは死と背中合わせの危険極まりない作業であり、しかもドイツ兵はあどけなさの残る少年ばかりなのだ。

ただでさえ爆弾処理を題材にした映画には緊迫感みなぎる作品が少なくないが、そこにデンマーク人指揮官の倫理的な葛藤を織り交ぜた本作は、観る者の心に揺さぶりをかけるエモーショナルな展開が予想される。

極限状況下のドラマと、広大にして美しい海辺のロケーションとの鮮烈なコントラストにも目を奪われそうだ。