ミュージカル『プリンス・オブ・ブロードウェイ』 柚希礼音 ミュージカル『プリンス・オブ・ブロードウェイ』 柚希礼音

『ウエスト・サイド・ストーリー』『オペラ座の怪人』『太平洋序曲』等々を生み出したブロードウェイの巨匠、ハロルド・プリンスの新作『プリンス・オブ・ブロードウェイ』が10月23日、東京・東急シアターオーブにて開幕した。ブロードウェイの第一線で活躍するミュージカル・スターたちに混ざり、日本からは元宝塚トップスター柚希礼音が参加。在団中はダントツの人気を誇り、宝塚100周年の顔として活躍した“トップ・オブ・トップ”が、堂々たるパフォーマンスで観客を魅了している。

【チケット情報はこちら】

ハロルド・プリンスの手がけた作品の名曲群をジューク・ボックス的に魅せていく内容であるとともに、彼の人生の――同時に、ブロードウェイの歴史を紡いでいく内容になっている本作。日本で上演されていない作品も多数盛り込まれているが、音楽の、キャラクターの後ろにしっかりとしたストーリーがあり、観客を飽きさせない。数曲の短いシーンでも、キャラクターがしっかり立ち上がるのは、熟練の出演者たちの腕のなせる技であるとともに、作品自身が持つパワーゆえだろう。ジョシュ・グリセッティのMCとブリヨーナ・マリー・パーハムのサリーが圧巻のパフォーマンスを見せた『キャバレー』、そしてラミン・カリムルーが官能的なファントムに扮する『オペラ座の怪人』などは、作品の魅力が凝縮された、この日本で観られるのが奇跡に思えるほど見応えある濃厚で贅沢なシーン。一方で、柚希扮するブロードウェイに憧れる少女がスターになっていく姿を描いた場面は、様々な作品のナンバーをコラージュし、名曲の新たな魅力を引き出している。名シーンを並べるだけではない粋な構成は、さすがブロードウェイ仕込みだ。

柚希はそのほか、『くたばれ!ヤンキース』のナンバーで、トニー・ヤズベック扮するジョーを誘惑する女性・ローラを黒の下着姿で演じるシーンも。魅惑的な中にコミカルさもあり、キュートな場面に客席も大喜びだ。ブロードウェイのスターたちの中にいても、伸びやかなダンスとセクシーな歌声は目立ち、なによりも華やか。彼女のパフォーマーとしての才能を改めて感じた。

『屋根の上のヴァイオリン弾き』『エビータ』『蜘蛛女のキス』『スウィーニー・トッド』…と、日本でもおなじみの楽曲が続き、あの作品も、この作品も巨匠の作品だったか…と、その豪華さにめまいを感じながら観ていくと、最後は新曲『ウェイト・ティル・ユー・シー・ワッツ・ネクスト』。「道の向こうに何があるのか、次に何が起こるのかを待とう」「やってみよう」「前を見よう」という明るいナンバーで締めくくられる。ハロルドの人生の軌跡を辿りながら、観ているこちら側の背中も押されるような素敵なミュージカル・ショーだ。

東京公演は11月22日(日)まで。その後11月28日(土)から12月10日(木)まで大阪・梅田芸術劇場メインホールで上演される。ぴあ貸切公演では来場者全員に、柚希礼音生写真をプレゼント。

「ウレぴあ総研」更新情報が受け取れます