ヤマダ電機は10月30日、東京駅の八重洲北口からすぐに立地する新しい都市型店舗「Concept LABI TOKYO(コンセプト・ラビ・トウキョウ)」をオープンする。29日の記者会見で山田昇・社長兼代表執行役員CEOは、「年商150億円は必達」と明言し新店舗の事業戦略を語った。

●「安心価格保証」のプライスカードがない

新店舗について、山田社長は「ヤマダ電機の店舗からの情報発信のあり方が大きく変わる。これまでの既成概念をひるがえすフラッグシップショップだ」と、位置付ける。「Concept LABI TOKYO」は、地下1階から10階のフロア構成で、売場面積は約6600平方メートルだ。各フロアを「ステージ」と呼び、階層ごとに独自のコンセプトを打ち出している。

ヤマダ電機の店舗で見られる「他店徹底対抗はアタリ前」などの過激な価格訴求や、「安心価格保証」として周辺のライバル店の価格調査結果をもとにしたプライスカードなど、おなじみの光景は一切見られない。そもそも店内に、前日の記者内覧会では、ヤマダ電機のおなじみのテーマソングが流れていない。

●メーカーを絞り込んだフロアも

特徴的なのは、アップル製品だけを展示する1階の「Apple Future Stage」や、ソニーとパナソニックのデジタルAV機器やウェアラブル機器を展示する3階の「SONY & Panasonic Presentation Stege」だろう。フロア全体を特定メーカーだけに絞り込むほどの大胆な施策は家電量販店の中で異例だ。

6階の化粧品、理美容、健康家電を展示する「Beauty Desing Stage」では、化粧品や製品の使い勝手を試せるパウダースペースを設置している。体験コーナーが多いのも特徴の一つだ。

ほかにも、メーカー別のデジタルAV機器やパソコン、白物家電のフロアづくりも目立っていた。各フロアでは、週末ごとにイベントを開催したり、珍しい高級海外家電を展示するなど、これまでのヤマダ電機とは明らかにコンセプトの異なる店になっている。

●新しい都市部の顧客層を開拓

山田社長は「(これまでの店舗は)お客様から見て品揃えやサービスがどこも同じではないかという視点があったと思う。最先端の情報が得られる店を提案できていたかといったら、残念ながらできていなかった」と、従来の店舗展開の反省を生かした店舗であることを強調した。

「Concept LABI TOKYO」は、東京という日本の表玄関から国内だけでなく世界に向けて、メーカー各社の最先端の製品やサービス、ライフスタイルの情報を発信する基地としての役割を担うという。

必達に掲げた1店舗だけでの年商150億円は、既存の家電製品による売り上げで、これまでの都市型店舗LABIの経験則から判断した数値だ。これに加え、法人営業やインバウンド(訪日外国人)需要を加えれば、150億円以上は狙えるという算段である。

少子高齢化で国内家電市場が縮小するなか、「Concept LABI TOKYO」は「これまでのヤマダとは異なる客層」(山田社長)の獲得を目指す。

具体的には、八重洲から歩いてすぐの日本橋に立地する日本橋三越本店や日本橋タカシマヤ(高島屋)など、百貨店を利用する富裕層や、出張で行き来するビジネスパーソン、インバウンドや海外に出張するアウトバウンド、2~3キロ圏内に本社がある法人などの開拓である。

10月28日、ヤマダ電機は2016年3月期第2四半期の業績予想を上方修正した。売上高は当初の予想より183億円マイナスの8047億円(予想比97.8%)だが、営業利益が105億円プラスの207億円(同204.5%)、経常利益が429億円(同167.1%)、純利益が126億円(同196.9%)と大幅な上方修正となった。

期初に実施した約60店の郊外店閉鎖で、売上高は減ったものの利益面が大きく改善したようだ。「構造改革はまだ途中」と語る山田社長。「Concept LABI TOKYO」が業績回復に弾みをつけるのか注目される。

(BCNランキング 細田立圭志)