ビックカメラが店頭の実演販売をネットで中継した(写真は5月12日のビックカメラ有楽町店)

【なぐもんGO・25】 実演販売をインタネットでリアルタイム配信するライブコマースの波が、家電量販にも押し寄せている。5月11日と12日、ビックカメラは家電小売業界で初の試みとなるライブコマースを実施。ネットとリアルを融合した新しい販売手法から、どのような効果が得られたのか。現場を取材した。

ネットとリアルで購買意欲が醸成

実施したのは、東京・有楽町の「ビックカメラ有楽町店」のピロティで、CCPの「コードレス回転モップクリーナー(ZJ-MA17)」を実演販売していた。商品は、水で濡らした2つの電動モップパッドを1分間に130回転させることで、軽い汚れから油汚れまで、水だけでキレイに掃除することができる。

商品を紹介する実演販売士は、販売PRのプロ集団「H&M」のまかせんしゃい井上さん。実演販売が始まると、小気味良いトークに寄せられて次第に人が集まりだした。さっそく商品説明をしながらフローリングについたクレヨンをキレイさっぱり落として見せると、周囲から拍手が起こるなど、会場の雰囲気は明るい。日本語に馴染みのない訪日外国人客も興味深そうに見守っていた。

ネット上のライブコマースでは「大理石に使えるのか」「洗剤は使えるのか」といった疑問やコメントが動画の視聴者か寄せられる。実演販売士がコメントにこたえると、店頭で実演販売を見ている人たちも納得してうなずきながら聞いていた。他の回では、店頭で見ている人が実演販売に参加するパフォーマンスもあったという。

実演販売をしている間にも、次々と商品が売れていった。商品は店頭でも、ECでも購入することができる。ビックカメラ広報によると「販売数は、1日に売れる数の数十~数百倍ほど」と、初回にしては絶大な効果だったという。動画のコメントから「買いました!」といった反応があるなど、ネット上の人たちと共感することで、リアルの買い物客の購買意欲が醸成されるといった効果もありそうだ。

ビックカメラでは今後も「製品や方法を選びながら、取り組んでいきたい」としている。今回、配信した動画は編集して他店舗で二次利用する計画だという。また、他店舗の店頭でもライブコマースを実施する計画が練られている。

ライブコマースの2つのメリット

販売する側がライブコマースを実施するメリットとして考えられるのは、大きく2点だ。まずはスタジオで収録するのとは異なり、接客をしているかのような臨場感のある説明ができる。目の前に来店客がいるので、表情や雰囲気をうかがいながら演出を変えたり、売り手側が伝えたいこと以外の情報も取り入れることができる。実際にネットで視聴していても、店頭で見ている人の反応は自然で共感できた。

もう一つが、店頭とネットで同時に商品を紹介できる上、収録した映像を他店舗でも活用できるという効率性だ。スタジオで収録するよりも手軽にできるものいい。配信環境や機材、スタッフはほとんどビックカメラが自前で用意しているので、費用対効果も高いという。

ただ、改善できそうな点もある。有楽町店のピロティは正面入り口で人の出入りが激しく、実演販売を見ている人だかりが動線を妨げてしまうことが見受けられた。さらに、店頭での実演販売が続いているにも関わらず、動画配信は1時間足らずで終わってしまった。こうした点は次回以降の改善に活かしながら、独自ノウハウを蓄積していくはずだ。

今回は実装されていなかったが、視聴者がSNSなどで動画を広めることができたり、店頭の様子をハッシュタグなどで拡散できたりするようになれば、さらに認知も広がるだろう。

有名なYouTuberなどのインフルエンサーを招けば、“公開収録”のような盛り上がりも期待できそうだ。ライブコマースを使った新たな販売スタイルには、さまざまな可能性が詰まっている。(BCN・南雲亮平)