そんな中、鉄道シロウトの俺の心を掴んだ商品が、東京メトロブースの「ドア上路線図」。文字通り、地下鉄のドア付近上部に貼ってある路線図、あれをそのまま売っているのだ。なにに使うの……ってそれは聞かない約束! お値段は300円。安っ!! 全然買えるじゃん!! と、何も考えず突発的に購入列に並んでみたが、果たしてどの路線図を買えばいいのだろうか。半蔵門線沿線に住んでいるからやはり半蔵門線か。鉄道初心者としてまずは東京メトロ全線を網羅した全体図にすべきか。ぼんやり悩みながら10分後、いよいよ売り場が近づいてくると、店員さんのこんな声が聞こえてきた。

「千代田線、残り2枚ですー」

 んなにい!? 千代田線が残り2枚!? とりあえず驚いてみたものの、実際千代田線にはなんの思い入れもないどころか、ほとんど乗ったこともない路線。しかし残り2枚という現実に、にわかに千代田線への想いが膨らんでいく俺。すると俺の前に並んでいた青年が、まんまと千代田線の路線図を購入したのだ。

「千代田線のこり1枚でーす!」

えええええ! これは、もはや神のお告げか、なにかの運命なのか……!? しかし千代田線。うーん千代田線。どうしよう千代田線……一生の中でこんなに千代田線のことを考えたのは、おそらくあれが最初で最後だろう。そして。

 

 

 

 

 ……買っちゃった。ラス1の千代田線の路線図(写真下。上はその後なぜか勢い任せに購入してしまった小田急線の路線図)。や、でもよく見ると、こういう路線図ってデザイン的にすごい優れてるのだ。視認性やわかりやすさを追求した結果、ミニマムなデザインが妙にテクノチックな雰囲気をかもし出していたりして、部屋に飾ってもいいかも(言い過ぎか)。ただ家に持って帰るのが大変だったけど(全長1m超)。ちなみに場内には、この路線図を抱えた鉄道ファンがあふれていた。さすがだ。

 

 

 

 

当日は九州新幹線をモチーフにした映画『奇跡』にちなんで、漫才コンビのまえだまえだがトークショーをやったり、全国の駅弁を売ってたりと、意外と(失礼)内容が充実していて、門外漢の自分でも想像以上に楽しめた。発見だったのは、鉄道に惹かれた人々の放つ、おだやかだがじわじわと熱いムードが、妙に居心地がよかったこと。うーん、自分、鉄道にハマる素質があるのかも。祭りじゃ祭りじゃー!! っていう盛り上がりではなかったけど、鉄道に情熱を注ぐ人たちの「ここぞとばかりに盛り上がる感」を確かに感じることができた。こんな祭りもアリだなー。それと、今日一日で一気に千代田線が好きになっちゃったなー。今度千代田線乗りに行こうかなー。そんなことを思いながら路線図を抱え、夕陽に染まる日比谷公園を後にした。来年は半蔵門線の路線図を買おう。