劇団スカッシュ 劇団スカッシュ

ありふれた日常の些細な出来事から、ぐいぐいとこちらを巻き込むスピード感でストーリーが展開していく。かっこよくない、むしろダサくて不器用な人たちが激怒したり、泣き叫んだり、バカ騒ぎする姿に「この人たち、何かズレてる」とくすっと笑い、でも最後はなぜかじーんとさせられる。劇団スカッシュは、作・演出を手掛ける大塚竜也。竜也の実弟でけん玉検定1級取得(自称)の大塚祐也。ネタ動画ではセクシーコック(?)として体を張る中田大地。そして、真面目そうな容姿から一変するトリッキーさが魅力の前川健二の4人で構成されている。もともとは劇団として旗揚げされ、紆余曲折ありながら現在の体制に落ち着いたのが2009年頃。小劇場を中心に作品を発表してきた。

しかし思うように動員数がのびない。そこで劇団のプロモーションにと目をつけたのがYouTubeだった。YouTubeでドラマやネタ動画を配信すると、そのクオリティーの高さで注目され、2011年にYouTube NexT Upメンバーに選出される。オフィシャルYouTubeチャンネルの登録数は24万人以上。合計再生数は1億1000万回を超えるYouTuber(ユーチューバ―)としてコアなファンを得ている。動画の再生数によって広告収入を得ながら活動しているYouTuberたちの中には、億単位の収入を得ている人もいるという。好きな動画を配信して楽しく稼いでいるなんて、うらやましいという感じもするが、現実はどうなのだろうか……。

劇団スカッシュの新作『秒速ドリーマー』は、そんなYouTuberがテーマだ。チケット完売で追加公演まで行った前作『ラブミーテンダリー』同様、YouTubeで配信する短編ドラマと舞台という構成でYouTuberの日常を描く。実際にYouTuberとして活動する劇団スカッシュが、再生回数や登録数を伸ばすための苦悩から収入のことまで、どこまで踏み込むのか? 

YouTubeで公開される映像版『秒速ドリーマー』の前編はすでに公開中(2015年10月30日から)。後編は11月6日(金)公開。そして11月26日(木)から12月6日(日)、笹塚ファクトリー(東京・渋谷区)で舞台公演が行われる。個々でも十分に楽しめるが、映像から舞台へとフィールドを変えながら二転三転していくおもしろさこそが劇団スカッシュの真骨頂。映像+舞台で、劇団スカッシュにどっぷり毒されてほしい。チケットは好評発売中。

文:吉川ゆこ