ダイキン工業の空調営業本部事業戦略室住宅用事業の谷内邦治担当課長

センサー競争が激しさを増すルームエアコンで、気流制御にこだわるダイキン工業のスタンスが際立つ。「当社は、床暖房の輻射熱で部屋全体が暖まることを理想として、エアコン暖房を開発した。それが、人に風を当てるのではなく、床から部屋全体を温める『垂直気流』だ」と、事業戦略室住宅用事業の谷内邦治担当課長は気流にこだわる競合他社と異なるスタンスを強調する。

●身体に風を当てない「垂直気流」

11月1日から発売している「うるさら7(セブン) Rシリーズ」は、業界初の「垂直気流」を搭載している。

温風が身体に直接当たると肌の乾燥につながってしまう。「垂直気流」は、暖かい風を壁と床を沿うようにして流すことで、身体に当たらないようにしながら部屋全体を暖める。

暖かい空気は天井にたまってしまう。そのため、いかに床面を暖めるかがエアコン暖房では一つのポイントになるのだが、本体から床に目がけて温風を送ると、どうしても身体に風が当たってしまう。これが不快感や肌の乾燥につながる。

垂直気流は、フラップが壁側に反り返るほどの角度をつけながら、壁を這わすように風を送る。壁を伝って床にたどり着いた風は、床面を這うように流れていく。

ただし、暖めはじめは特に床面が冷えているので、「人・床温度センサー」で床の温度をセンシングする。遠くから順番に斜め吹きや下吹き気流で床全体を暖めてから「垂直気流」に移行する。

●「うるる加湿」も加わり肌の乾燥を抑える

Rシリーズには、ダイキン独自の「無給水加湿」の「うるる加湿」機能が備わっている。外部の空気中の水分を集めて室内を加湿するため、水タンクなどのメンテナンスが不要な加湿方式だ。

「無給水加湿」と「垂直気流」の合わせ技で、従来機よりも唇の表面の乾燥が約40%低減した。気流が当たるとカサカサな唇になる。だが、気流を当てないことで唇の表面がなめらかになるのだ。

「垂直気流」は静音性と節電にもつながった。壁と床を這わせるゆっくりした気流は、風量を抑えながら部屋全体を効率的に暖めることができる。そのため、従来43dBだった騒音を34dBへ、最大で9dBの静音につなげた。

気流が効率的に流れるということは、吹き出し温度を抑えても部屋全体が暖まる。つまり、節電にもつながる。従来の暖房気流では295Whだった。それが、新製品では200Whへと約30%の節電に成功した。

もともと3年前に初代「うるさら7」で、冷房時のサーキュレーション気流を提案したのはダイキンだった。今では気流制御は各社のエアコンに標準装備されている。

新開発の垂直気流には、さらに気流制御を極めることで、センサー競争に巻き込まれずに違う土俵で戦おうとするダイキンの事業戦略が反映されている。

(BCNランキング 細田立圭志)

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