トークイベントより。土取利行 トークイベントより。土取利行

11月25日(水)に東京・新国立劇場で開幕する、舞台『Battlefield 「マハーバーラタ」より―戦い終わった戦場で―』。今秋パリで初演を迎えた、ピーター・ブルックの最新作だ。その来日公演を記念し、現代演劇界の巨匠であるピーターの舞台音楽を約40年にわたり担当する土取利行を迎えたトークイベント「音楽家 土取利行が語る、ピータ・ブルックと『マハーバーラタ』30年の軌跡」が10月31日、東京・パルコ劇場で開催された。

舞台『Battlefield』チケット情報

1975年の出会いから約40年の歴史の中で起きたさまざまな出来事を昨日のことのように振り返った土取。演劇ジャーナリスト・伊達なつめの進行のもと、今作の元となった伝説の舞台『マハーバーラタ』の制作秘話や今作『Battlefield』のエピソードなどを披露した。「ピーターは妥協を絶対許さない。でも怒らないやさしい人です。役者との会話を絶対に欠かさず、厳しさを押し付けたりしない。だから僕はいまだに彼と仕事をするのが楽しいし学ぶことが多い」

今作『Battlefield』については、パリで既に観劇済みの伊達が「突き抜けたシンプルさで有無を言わせない。あっけらかんとした見事な終わり方で素晴らしかった」と感想を語り、土取も「ピーターが90歳になってできる、人生の究極(の作品)だと思う」と話した。

土取は今作にも参加しているが、実は同時期に中国で上演するピーターの舞台『驚愕の谷』にもすでに参加していた。にもかかわらず、ピーターは今作にも土取の音楽を熱望し、『Battlefield』の音楽はレコーディングで対応することになったという。しかし、「やってみて、録音では無理だねって(話しました)。『マハーバーラタ』は僕にとってもものすごい芝居でしたし、これは自分のカルマだと思って引き受けました」と笑う。そのために『驚愕の谷』は土取なしでもできるように演出を変更したという。それほどまでに『Battlefield』には土取の音楽が必要なのだ。

最後に土取はエスラジというベンガル地方の弦楽器の演奏を披露。その後、「『Battlefield』の始まりは『War is over』です。戦争は終わった。そうすると何が始まるか。勝利者が『勝利は敗北だ』だと自覚するんです。それで賢者の言葉を聴いていくのですが、その真珠のような言葉を語るいろいろな動物を、ルワンダの女優さんが演じています。(ルワンダ出身なので)彼女は戦争の悲劇を全部知っている。ところが彼女はそういうことを一切口にしません。ピーターもポリティカルな芝居じゃないと言っている。でも、主権者に観てもらわなければいけない芝居です。背後に深い教えがある作品です」と強く語り、会を終えた。

公演は11月25日(水)から11月29日(日)まで東京・新国立劇場 中劇場にて。