【映画コラム】食べることは生きることなのだと思わされる『起終点駅 ターミナル』

2015.11.7 18:3配信
(C) 2015 桜木紫乃・小学館/「起終点駅 ターミナル」製作委員会

 直木賞作家、桜木紫乃の短編小説集を映画化した『起終点駅 ターミナル』が公開された。

 妻子を東京に残し、北海道旭川の地方裁判所で判事を務める鷲田(佐藤浩市)は、この地で昔の恋人・冴子(尾野真千子)と再会し、関係が再燃する。だが冴子に目の前で自殺された鷲田は、身を隠すようにして釧路にたどり着く。

 それから25年。妻子と別れ、国選弁護専門の弁護士として静かに生きてきた鷲田の前に、被告人として、冴子の面影を感じさせる椎名敦子(本田翼)が現れる。

 孤独や絶望を抱え、未来を諦めた初老の男と若い女が出会い、互いに触れ合う中で一筋の希望を見いだしていく様子が釧路を舞台に描かれる。タイトルには、過去と訣別し、人生の“終着駅”を“始発駅”へと変えていくという希望が込められている。

 ところで、北海道を舞台にした、人生を鉄道になぞらえるような映画と言えば、『遙かなる山の呼び声』(80)『駅 STATION』(81)『鉄道員(ぽっぽや)』(99)といった、間もなく一周忌を迎える健さんこと高倉健の主演作を思い出す人も多いだろう。その健さんとはゆかりの深い東映が本作を製作しているのも何かの縁か。

 さらに本作は、過去の重荷を背負った主人公のストイックな生き方という点でも健さんの諸作と通じるものがあるが、佐藤は鷲田の人物像に弱さや未練をにじませ、健さんが演じた主人公たちよりもより身近な存在とした。

 それは、全ての欲望を絶ったかのようにも見える鷲田が、唯一、食べることや料理することにこだわる姿にも象徴される。特に鷲田=佐藤が作るザンギと呼ばれる鳥のから揚げのおいしそうなこと。食べることは生きることなのだとあらためて思わされる。(田中雄二)

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