島からの風景

 8日の放送で、番組スタートから20周年を迎えた日本テレビ系の人気バラエティー「ザ!鉄腕!DASH!!」。畑や海岸を切り開いたり、無人島を丸ごと開拓したり、物作りに一から挑戦したりと、TOKIOが体を張ってありとあらゆる企画に挑むこの番組の裏話を、陰で支えるスタッフの方々に聞きました。今回は「DASH島」の裏話です。

File6 笠井彩 アシスタントプロデューサー

(番組に携わって7年目。「ソーラーカー 日本一周!」や「DASHガレージ」など数多くの企画に携わる。現在の主な担当番組は「DASH 無人島を開拓できるか!?」「世界一うまいラーメンつくれるか」「DASHご当地PR課」ほか)

―この企画が始まったきっかけを教えてください。

 最初は「秘密基地を作りたいね」というスタッフの意見から始まって、そこから「無人島をマルっと開拓できたら面白いよね」という発想につながっていきました。TOKIOの5人にその構想を話したら、全員が「海を見て露天風呂に入りたい」「みんなでバーベキューがしたい」といった声をぶつけてきてくれたので、「じゃあ実際にやってみよう!」ということになって。自分たちの子どものころの夢をかなえるために始めたような企画です。まずはとにかく家を建てようとするんだけど、いざやってみたら「ヤバい、物を運べない」となってトロッコを引き始めるっていう(笑)。そうして気付けばもう3年以上がたっているんですよね。まさか最初は石橋を作ることになるとは全く思ってなかったし、ましてやそれを1年以上かけて作業することになるなんて、誰も思ってなかったです。

―これまでの作業の中で、最も予想外だったことは何ですか?

 やっぱり台風の被害でトロッコの線路が崩れてしまったことですかね。トロッコって、放送で流れている以上に島ですごく活用されている大事なものなんですよ。それが使えなくなって、さすがに「この先、どうしたらいいのかな」とみんなで話し合いました。結果、石橋ができて安定感もグッと上がったので本当に良かったと思います。作業をしていたメンバーはとても大変そうだったけれど(笑)。

―笠井さんから見た、島でのメンバーの様子を教えてください。まずは山口さん。

 島では「この人にこれをやってもらおう」ということはあまり決めていなくて、その場その場で決めていくようなロケが多いんです。そうした中で「これは長瀬が向いてる」「あれはリーダーがいいんじゃないか」と判断してくれるのが達也さんですね。私たちスタッフも頼っているし、ご自身も「俺がしっかりしないとこの島の開拓は進まないぞ」と恐らく分かっているので(笑)、何かを作るときには大抵、真っ先に達也さんに相談します。作業も先陣を切ってやってくれるし、本当に頼りになる人です。

―城島さんは?

 リーダーは意外と怖いもの知らずです。私たちが「ちょっと調べてからの方がいいかも」と思う木の実などをすぐに食べてみようとしちゃったり、「そっちに行ったら危ないかもしれないよ」という場所にズンズンと行ったり。一見、慎重で弱腰に見えるかもしれないですけど、実は一番目が離せないんですよ。その分、心から島での時間を楽しんでくれている。「次、何やろうか?」って一番言ってくれるのはリーダーかもしれません。そしてある意味、同じぐらい「今日はどんな楽しいことができるのかな?」という感覚で島に来てくれているのが(国分)太一さん(笑)。

―そうなんですね!?

 とてもアウトドアに向いた感性の持ち主なんですよね。帆船を直す作業などでも「こうなったら危ないかも」といったことをすぐに想定できてしまう。ウサギなどの生き物を見つけるのも得意だし。森の中で生きる力が強いのかなという感じがしますね。あと太一さんと長瀬さんがそろうと、1時間でも2時間でも、ず~っと遊んでます(笑)。でも長瀬さんも遊ぶときは全力で遊ぶけど、そうでない場合は意外と5人の中で最も「それ、大丈夫?」と確認する役割を担っている気がします。よく周囲を見ている方なんでしょうね。私たちが気付いていない部分に真っ先に気付いて指摘してくれるのも、長瀬さんが多いです。

―松岡さんは?

 この企画を通してだいぶキャラが変わったのは松岡さんですね。ほかの企画だと、どちらかというとみんなを引っ張っていくタイプに見えるんですけど、実は結構なビビり…というと本人は怒るかもしれないけど(笑)、どこか女性的な感性も持ちあわせているんです。ヘビを怖がるところもそうだし、生き物をめでたり食べ物を大事にしたり、季節を敏感に感じたりだとか。この前もスズメバチを駆除したときに「仕方がないんだけど、ハチがちょっとかわいそうだな」って言うんですよ。以前からそういう面は少し見受けられたんですけど、特にあの島での開放感の中では、惜しげもなく出してくれるようになりましたね。

―そして、そんな5人が島に集合するとまた楽しくなりますよね。

 いいですよね、なんというか自由だなぁと思います(笑)。“リゾラバ”なんていい例で、スタッフ側はただ「砂浜で遊びましょう」という話をしただけで、それ以外の遊びは全部あの5人で勝手に考えていますからね。一応カメラが回っている中であそこまで全力で遊び切るのがすごい。いつも想像をはるかに超えてくる展開を見せてくれますね。

―今後のDASH島の予定は?

 基本的に今はまだライフラインが全く成り立っていないので、まずはあの家で一日を過ごせるような環境に向けて動いています。取り急ぎ水路を完成させて、その後はまだ展望の段階ですけど、何かを育てたり、明かりがつくようにもしたり。恐らくまだ出会っていない生き物などもいますからね、やれることはまだまだ、山のようにあります。

―最後に笠井さんが忘れられない、メンバーとのエピソードを教えてください。

 なんでしょう…。多すぎるんですよね(笑)。そうだ以前、ADからずっとこの番組にかかわってきたスタッフの一人がディレクターデビューを果たしたんです。緊張していたと思うんですけど、その時ロケをしていたリーダーと達也さんが、その子に全く別々の場所で「おまえが録(と)りたいものを録ればいい」と言っていたんですよ。「間違ったら何回でもやり直すし、俺らが違うと思ったら言ってくれ。デビューだから先輩たちもいろいろ言うかもしれないけど、おまえが一番やりたいと思ったことを俺たちに伝えてくれ」って。2人が偶然同じことをそのスタッフに言っているのを聞いて、「あぁ、この番組をやって良かったな」と思いました。すごくうれしかったことを今でも覚えています。

―この番組でのTOKIOとスタッフとの絆の強さがうかがえますね。

 でも5人はよく「俺たちは『DASH』にダマされて育った」って言うんですよ。今、皆さんから「TOKIOって何でもできるよね」「こんなことまでやるんだ」と言われる機会が多いですけど、それを聞くたびに「『DASH』の1回目からそうするのが当たり前だと教わってきたから、俺らに拒否権はなかった!」と(笑)。番組が始まった当初から「やってくれますか?」と聞かれたこともないし、「やらない」っていう選択肢もなかったそうなんです。だから逆に今、尋ねられるとビックリするんだそうです。「え!?選べるの? “仕事を選ぶ”って何?」って(笑)。松岡さんなんて「最初に持ったレギュラー番組を俺たちは間違えた」「DASHのせいでTOKIOは何でもやるグループになったんだ」とまで言うんですよ。それを私たちスタッフ側も「そうですかー」って言いながらニコニコ聞いているっていう(笑)。島でもそうですけど結局はTOKIO自身が楽しんでくれているのが伝わってきますし、私たちも彼らが楽しんでくれるのが一番と思って撮影をしています。たとえ、ロケ中にどんな予想外のハプニングが起ころうとも(笑)。

 雑誌「月刊TVfan」ではTOKIOメンバーが出演番組のエピソードを語る「TOKIOのお仕事」を連載中。発売中の12月号では「DASH島」の模様を城島さん、山口さん、松岡さんが語っています。