――WING WORKSはEDMの要素を多く取り入れています。EDMといっても色々ありますけど、中でも最近日本でも流行ってるものってハッピーな感じが全面に出てると思うんです。個人的に『FIXXTION BOY』も多幸感があって、近年のEDM的なものとV系がうまい形で融合しているなと。

RYO:SUKE:『FIXXTION BOY』という作品の熱量やパワーだけで言うと、僕はあの曲に関しては誰に聴かせてもライブで掴めている自信があります。

ただ、自分ではあの曲は単にハッピーなだけではなく僕が死のうとした時に書いた曲なんです。自分の音楽や人生を終わりにする以外の選択肢が無いくらいの壁にぶつかってしまって。その時の気持ちを書いた曲なので。
でもそこから這い上がったから今がある。人生ってそんなもんじゃないですか。

――「壁」というのは具体的にはどのような状況だったのでしょうか。

RYO:SUKE:WING WORKSのやっていることと、ヴィジュアル系シーンとのズレが高くなってしまっていたというか…単純に意図していた活動をビジネス的な意味でも継続できない時期だったというか。

それで活動方針を変えていかなくてはならなくなって。そういう状態でツアーをやる中で『FIXXTION BOY』ってタイトルはあったんですが、まったく形にならなくて。その先の未来が見えないから何も浮かばなくなって、自分は終わったなと思いました。

でもそこから色々な人の手助けがあって、もう一度作品を形にする事ができたという感じなんですけど。そういうギリギリの中で生まれた曲だからこそ、僕的には人間の根本的な部分について歌えてるし、好みを超越する本質をつかめる曲だと思うんです。結果ライブでつかめるというか、何か届いてる感じがします。

――シーンとのズレというのは?

RYO:SUKE:まずこのシーンでソロアーティストとして活動していて、シーンに媚びない音楽をしているという時点で、このマーケットでのそもそもの需要がない中で勝負している。これはWINGWORKSの活動をやっていて感じるようになったことですが、それでも僕は覚悟の上で、というところもあります。

今、音楽ビジネスというのはなんとなくですけど、キャラクター性か重視される「キャラクタービジネス」だと思うんですよね。ヴィジュアル系シーンだけではなく、他のジャンル、たとえばラウドロックに対しても思うんです。

たとえば、MAN WITH A MISSIONがオオカミのキャラクターを通す勇気と覚悟は凄いことですし、それを否定する側にも行きたくない。

けれども安直に「これをやったら受けるでしょ」的なところとはちょっと離れた場所で勝負をしたいというか。
本当に今僕がシーンのツボを抑えたキャラクター的な音楽をやるのであればバンドを組むべきですし。「バンド」という関係性が見えることに対してお客さんが支持してくれる部分もあるわけじゃないですか。

――キャラクターとストーリーが音楽に付随している、ということですか。WINGWORKSにも「未来からきたアンドロイド」という設定はありますが、それは今おっしゃった現代の音楽シーン的な「キャラクター性」とは違うというのはわかります。だってRYO:SUKEの活動には「関係性」が薄いですし。

RYO:SUKE:活動する上でのストーリー作りということには僕もすごくこだわっています。だからこそ『IKAROS』みたいなテーマが生まれたりもしました。

シーンのメインストリームから離れる一方で、ここまで音楽性を振り切ったからこそ、ラウドロックシーンや海外のイベントからも呼ばれるようになった。それは僕がつけてきた足あとなので、それを受け取って欲しいということでしかないのかなって自分では思いますね。

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