初のプロジェクションマッピングで来場者を迎えた「第44回東京モーターショー2015」

第44回東京モーターショー2015が11月8日、11日間の会期を終え閉幕した。「きっと、あなたのココロが走り出す。」(“Your heart will race.”)をテーマに、世界11か国から計160社が参加。主催の日本自動車工業会(自工会)は「自動運転ビジョン」も発表した。しかし、総入場者数は81万2500人。13年に開催された前回の90万2800人に比べ1割減少した。2011年に会場を幕張メッセから東京ビッグサイトに移して以来最低の入場者数で、1960年開催時の81万2400人とほぼ同じ水準だ。

日本人の車離れが広がっている結果だと報じるメディアも多いが、不振の要因はそればかりではないだろう。車の最先端技術の一つ、自動運転についての展示がきわめて乏しかったからだ。一方、5月、上海で開かれたコンシューマー・エレクトロニクス・ショー・アジア(CES ASIA)では、モーターショーかと見まごうばかりの派手な車の自動化アピール合戦が繰り広げられた。車とエレクトロニクスという展示会のメインテーマは異なるものの、自動運転に対する熱量の落差が大きい。

CES ASIAでは、アウディAGのUlrich Hackenberg技術開発取締役が「SFの世界が現実のものになる。安全のために自動運転を選択する時代は目前だ」と語り自動運転コンセプトカー「R8 e-トロン」をお披露目。一方、ダイムラーAG中国のHubertus Troska取締役は「自動運転の社会は誰もが考えるよりずっと早く到来する」とロボットカーの異名をとるメルセデスの自動運転コンセプトカー「F 015」を高らかに紹介した。いずれも実際に公道を走る映像を紹介しながら、現実味あふれる展示が印象的だった。

自動運転車は、今回の東京モーターショーでも日産が「IDS Concept」、メルセデスが「F 015」に次ぐ「Vision Tokyo」を発表したものの、自動運転技術や機器の具体的説明や実際に路上を走る映像などの展示は少なく、取り扱いはきわめて地味。自動運転車に対してはまだまだ未来の車という、遠慮した空気が感じられた。

ボストンコンサルティンググループが9月に発表した調査結果では、完全自動運転者の購入意向について「是非、購入したい」が15%、「どちらかと言えば購入したい」が29%と、44%と半数近くが購入意向を示した。自動運転車に対する関心と期待は高く、市場のポテンシャルは極めて大きい。モーターショーの雰囲気とは対照的だ。

安全面の確保や法整備の問題などをクリアし、自動運転車が日常的に公道を走るようになるまでには数多くのハードルをクリアする必要がある。自工会では、2030年ごろ完全自動運転が普及期に突入すると試算しているが、スピード感が足りない。特に、世界の主要自動車メーカーがターゲットに据える中国市場では、ある程度技術が整えば法整備などは一気に進む可能性が高い。日本メーカーは乗り遅れてしまうだろう。

テレビやスマートフォンの世界市場から日本企業が追い出されてしまったように、車もそうなりかねない。車を極めて高度なIT機器として再定義し、自動車メーカーとIT企業が枠を超えて融合しながら連携しなければ、次世代自動車市場での日本企業の生き残りは難しいだろう。(BCN・道越一郎)