閉館した映画館の勇姿と“想い”を伝える

2015.11.11 16:13配信
『シネマの天使』(C)2015 シネマの天使製作委員会

藤原令子、本郷奏多らが出演する映画『シネマの天使』が公開されている。本作は、広島県福山市で長年に渡って愛され続けてきた映画館“シネフク大黒座”が閉館することを機に製作された作品で、ドキュメンタリーではなく、あえて劇映画として製作された。

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シネフク大黒座は、昨年8月に122年の歴史に幕を閉じた老舗劇場で、芝居小屋としてスタートし、街が繁栄していくのと歩調をあわせるように増築やスクリーン増を重ねてきた。劇場を運営していたフューレック代表取締役社長の藤本慎介氏は「いずれは閉館する覚悟はしていました。建物は改築を続けてきたため見た目は問題ないように見えたかもしれませんが、実際は配管が破れたり、目に見えない部分の老朽化が実は進んでいました」という。

そんなシネフク大黒座の勇姿を映画に残したいと考えたのが、フューレック映像事業部部長の酒井一志氏だ。酒井氏は「ちょうど『ラジオの恋』舞台挨拶の打ち合わせで来館された広島在住の時川監督に相談してみました。記録映画か短編映画になれば、というような話をしていましたが、本当は映画に残したいと思っていました。時川監督が劇映画のシノプシスを書いてきてくれた時は、読んだその場で涙が止まらなくなりました」と振り返る。

当初、時川監督は、映画館の姿を記録するドキュメンタリー映画を考えていたが企画が進まず、ある時に劇場の人々に「自主制作みたいな感じで、プロの俳優でなく大黒座で実際に働いている人たちが出演する短編映画でも撮りますか?」と話したところ、大黒座の人々は泣き出したという。「122年続いた劇場へのスタッフの方々の強い思い、それほど大切な場所なのだと、その時初めて僕も気づかされた」という時川監督は、映画館のスタッフひとりひとりに聞き取りを行って、エピソードや思い出を脚本に盛り込んでいったという。「建物は実際の大黒座で撮影していますので、壁の手書きメッセージを含めて本物です。閉館日のセレモニーも実際に撮影して、物語の一部として使っています。実話とフィクションの物語がひとつに融合することで、消えゆく映画館の物語を鮮明に描こうとしました」

老朽化や市場の変化などの理由で、老舗の映画館が閉館になってしまうことがあるが、その姿や劇場で働いていた人々、客席でスクリーンに向き合ってきた観客の想いは、記録されることなく消えてしまうことが多い。映画『シネマの天使』は、シネフク大黒座の“姿”だけでなく、そこに集った“想い”も後世に残そうとする試みで、時川監督は「時代が変わる中で、何かがなくなってしまうのは仕方が無いことかもしれません。でも、その消えゆくものを見つめることで、何が大切だったのかを改めて知るのではないかと思います」と語っている。

『シネマの天使』
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