『パラレルワールド・ラブストーリー』5月31日(金)全国ロードショー ©2019「パラレルワールド・ラブストーリー」製作委員会©東野圭吾/講談社

映画『パラレルワールド・ラブストーリー』 で玉森が演じる崇史は、2つの異なる世界に迷い込む。 その導入はこんな感じだ。

研究者の崇史は、ある日、 親友の智彦から恋人を紹介される。だが、その女性・麻由子は、 崇史が以前から密かに想いを寄せている人だった。

嫉妬に苦しむ崇史。だが、ある朝、目を覚ますと、 麻由子は自分の恋人になっていて、智彦は忽然と姿を消していた。

果たして麻由子は本当に自分の恋人なのか? それとも親友の恋人なのか? そして、智彦はいったいどこに行ってしまったのか?

そんな2つの世界を行き交いながら描かれる愛のミステリーを、『 聖の青春』(16)、『宇宙兄弟』(12) などの森義隆監督が玉森と智彦に扮した染谷将太、 麻由子役の吉岡里帆の共演で生々しく視覚化。

その狂おしい世界を主人公の崇史になりきり、 苦しみながら生きた玉森裕太が、 これまでに体験したことのない過酷な撮影を振り返ってくれた。

俺って何なんだ? という感じで迷宮入りしていった

『パラレルワールド・ラブストーリー』5月31日(金)全国ロードショー ©2019「パラレルワールド・ラブストーリー」製作委員会©東野圭吾/講談社

――『パラレルワールド・ラブストーリー』は15年の『 レインツリーの国』に続く2本目の主演映画です。 前回よりリラックスして撮影に臨めたんじゃないですか?

いやいや、そんなことはないですよ。毎回、すごく緊張しますし、 お芝居のときだけじゃなく、 キスマイとしてアイドルの仕事をやっているときも未だに緊張します。

この緊張感は、たぶんこれからも抜けないとだろうし、 いいお芝居に繋がるなら、 緊張感も楽しんでやっていきたいなと前向きな気持ちでいますね。

――撮影に入る前に、森監督から「主人公の崇史に、 すべてを捧げる覚悟を決めてくれ」と言われたそうですが、 それを聞いたときはどんな気持ちでした?

別に口に出しては言いませんでしたけど、「もちろん、 そのつもりですよ」という想いでいました。

まあ、「はい、 分かりました」 と言ってしまえばすぐに終わっちゃうようなことですけど、 それはどういうことなんだろう?って深く考えたときに、 何をどこまでどうするんだろう? という、いろいろな“?”が出てきて。

それに、 これまでに経験したこともないような難しい役だったので、 死ぬ気でやるしかないなと思ったし、 崇史に全力でぶつかっていく感じでした。

――オフィシャルのインタビューでは「不安とプレッシャーでいっぱいだった」 とコメントされていますが、 それは何に対する不安とプレッシャーだったのでしょう?

映画をやることに対してのプレッシャーももちろんありましたけど 、それ以上に、親友を失うような経験をしたことがないので、 自分はどうなっちゃうんだろう? と思ったり、そのときにきに何を思うんだろう? と考えたりして。

『パラレルワールド・ラブストーリー』 の世界が純粋に怖いなという気持ちもあったと思います。

――森監督には「崇史を演じる前に、 自分自身の内面を見つめ直して欲しい」とも言われたそうですね。

そうなんです。だから、僕、 自分の生い立ちから性格まですべて記憶に残そうと思って箇条書き にしたんです。

その作業の中で崇史と自分の似ているところと違うところを出して 、なぜ彼と自分は違うんだろう? とか、 どういう生活をしていったら崇史みたいな思考になるんだろう? とか、やっぱりそれは哲学的な領域になっちゃうのかなとか、 いろいろ考えました。

そうやって、崇史と自分を比べたり、 深く見つめる時間をたくさん設けたし、 それは改めて自分はいったい何なんだ? って深く考えた期間でもあったので、 すごくいい機会をいただいたなと思いましたね。

『パラレルワールド・ラブストーリー』5月31日(金)全国ロードショー ©2019「パラレルワールド・ラブストーリー」製作委員会©東野圭吾/講談社

――崇史と比較してみて、自分はこういう人間なんだな? って改めて分かったことはありますか?

自分は、崇史に比べると根性がないなと思いました。

崇史は麻由子と出会うずっと前からつき合いがある親友の智彦を裏切ってでも、彼女の方に向かう大きな愛があるじゃないですか。 でも、俺はあんなことできない。

例え、 その女性のことが好きでも、親友との関係性を考えたり、親友に「彼女のことが好きなんだ」って言う勇気がないなと思っちゃって、 その女性の方に向かえないような気がするんです。

そうやって、 いろいろ突き詰めて繋げていった結果、あっ、 俺って根性がない奴かもと思って。もう、考えれば考えるほど、 俺って何なんだ? という感じで迷宮入りしていったんです(笑)。

――でもそれは、根性がないと言うより、 好きな女性に対する愛と同じぐらい、 友情も大事だからという想いがあるからなんじゃないですか?

まあ、そうなんですけどね。でも、そのときは自分って何? って頭の中で考え過ぎて、何度も何度も分からない、 分からないという感覚に陥ったんです。

監督に言われて自分の内面とちゃんと向き合ったら、 それがめっちゃ難しかった。

言われなければ絶対にやらなかったと思うので、 自分と向き合う方法を教えてくださって本当にありがとうございますって感じだったんです。

映画を通して、自分自身の内面を見つめ直した結果…

――自分を見つめ直した結果、 崇史と似ているなと思ったところは?

麻由子と出会う前の、 親友の智彦との接し方や一緒にいるときの感覚は似ているような気 がします。

映画では描かれてないけれど、 彼女と出会う前の崇史と智彦ってどんな感じだったんだろうな? って考えたときも、そんなに会話がなくても、 お互いに一緒にいるだけで心地いいんだろうなって自然に思えたし 、そういう感覚はすごく似ているような気がしたんです。