【酒場】高円寺「七助」で衝撃的なブリカマに遭遇

大将が一人で切り盛りする、高円寺の立ち飲み屋「七助」。隠れ家のような佇まいのその店で、絶品の刺身にエビ、そして衝撃的なブリカマに出合った。

 
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千円でベロベーロになれるせんべろ酒場。
今夜は高円寺の立ち飲み「七助」にやってきた。
初めて暖簾をくぐったのは確か5年前。


すでに酩酊状態の深夜の訪問だったために、ちっちゃくて古くってなんか楽しかった? 
という小学生のやっつけ日記みないな記憶しかなく、
今日の今日まで思い出すことはなかったのである。なぜ思い出したか。
春の爆弾突風のせいだ。


おらがお気に入りのせんべろ酒場は、きゃしゃな店が多い。
文字通り、吹けば飛んじゃいそうなあやういたたずまい。
改装するくらいなら、一円でもせんべらーたちに還元したい。
そんなパッションがある店ほど老体の案山子のごとく、
東京砂漠でふんばっていることを我々は忘れちゃいけない。


あたまの中で、京成線から埼京線、山手線をぐるぐるまわりいくつかの店を心配した。
そして中央線まで来たときに、突然「七助」がフラッシュバックした。
だいたいの店は家族経営だったり従業員がいる。
看板が傾きそうになったら一人がささえ、一人がガムテ等で補強するという
チームワークで店を守ることができるだろう。


若いバイトがいれば、「お前は暖簾を守れ! おいらは土嚢を持ってくる!」「よしきた!」
などとちからをあわせて乗り越えることができるだろう。
しかし「七助」はたしか大将一人の五坪のお店だ。
高円寺のピンク色のネオン輝く商店街の一等地で、信じられないくらいの地味さでたたずんでいる。


自販機二台分くらいの入り口に、そこがすばらしき酒場と知らない住民も意外といる。
しんぱいだ。とってもしんぱいだ。
店は壊れていなくとも、今日みたいな日はきっとお茶をひいているに違いない。
5年間の不義理を棚に上げ、私は爆弾突風の中オレンジ色の電車に乗った。
縄のれんは店内にしまってあったが、看板には明かりがついていた。
店の外の看板は、なぜか初代と二代目の2段構えのダブル付けというのが味わい深い。
それなりに自己主張はしているのだ。


からからと引き戸を開けると、すでにカウンターは7割方埋まっているではないか。
30歳前後の男女3人組に、一人酒のおっちゃん、中年サラリーマンの二人連れなどなど。
私は入り口そばのカウンターに陣取った。高円寺の町マップがあるが、「七助」は載っていない。


ので、大将自ら赤ペンで印をつけてあるのにぐっとくる。
奥から大将が「らっしゃい」と小股でかけてくる。
思い出した。
初めて会った瞬間から不思議と人に懐かしさと愛着を抱かせる大将のお顔。
うなぎいぬ似。もちろんいい意味でだ。


こんなにラブリーなうなぎ犬フェイスは23区内の酒場を巡ってもそう会えるものではない。
うなぎ犬大将は一人で料理をし、注文を聞き、伝票をつける。
ミニホワイトボードを見ると、今日は甘エビやタコ、イワシの刺身があるようだ。


どれも300円台。大のナマもの好きだ。こころの中はうなぎ犬とサンバだ。
聞くところによると20年来、日本料理で修業をしたのちに開いた店だそうで、
刺身の仕込みや盛りがじつに丁寧と評判だ。
小型テレビをBGMに五坪の店内は皆、のどかにほろ酔っている。
ふとガラガラと戸が開き、馴染みらしいちょっとこわもてのオッチャンが入ってきた。
じろりとこちらを見た。


ひょっとして私が立っているこの場所は彼の定位置なのかしら。
小さな店ほど、目には見えない流儀がある。
体をなるべくコンパクトにまとめ斜め立ちする。
少し笑みを浮かべるのも忘れない。
オープンマインド・ウエルカム・サインだ。略してオッス。
しかしオッチャンはテレビの真下に陣取ると、さらに私をじろりと見た。
「ちょっといい?」
「は、はい…」
オッチャンは私の足下の荷物台に鞄を置きたかったらしい。
焼酎濃厚なウーロンハイ280円と、ぷるっとした弾力のタコ、
それにわたまでうまいエビの頭をちゅうちゅう吸いながらしあわせを噛み締めた。


 

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