オダギリジョー

激動の20世紀初頭、フランスを拠点に活動した日本人画家・藤田嗣治の人生を描き出す『FOUJITA』の初日舞台あいさつが11月14日に、都内で行われ、主演を務めるオダギリジョー、妻役で共演する中谷美紀、10年ぶりに長編映画のメガホンをとった小栗康平監督が登壇した。

『FOUJITA』舞台あいさつ/その他の写真

オダギリ演じる藤田嗣治は“エコール・ド・パリの寵児”と高い評価を獲得しながら、帰国後は戦争協力画を描くことになった、葛藤に満ちた天才画家。「小栗監督は表情を作ったり、セリフに感情をこめたりする演技を嫌っていた」と振り返るオダギリは、「そのおかげで自分の演技もどんどん研ぎ澄まされ、セリフの重みも増した。とても新鮮な体験で、演技の新しい意味を見つけた気がする」と強い手応えを示した。

その上で「自分が演じる姿が、今までのどの作品より美しく見えた」と断言し、「今までは『東京タワー』のオダギリジョーと言われていましたが、これからは『FOUJITA』を代表作にしてもらえれば。自画自賛ではないですよ」と誇らしげ。劇中にも登場する等身大マネキンとのツーショットには照れ笑いだった。

そんなオダギリに対し、共演した中谷は「オダギリさん、とても素敵でしたよ。自画自賛なさるのも無理はない。私もつい見とれてしまった」と茶目っ気たっぷりに称賛。自身が演じるのは、藤田の5番目の妻という役どころで「他の奥さんに嫉妬しながら演じていました」と役作りを明かすと、オダギリは「ずっと素敵な女優さんだと思っていたので、共演できてうれしかった」と喜んでいた。

同日(現地時間13日)、パリでは痛ましい同時多発テロが発生し、小栗監督も「とても不幸なことがありました」と沈痛な面持ち。映画は約100年前のパリを描くが「今に結びつく問題が、この映画にはあるんだろうと思う」と静かな口調で語った。

『FOUJITA』
公開中

取材・文・写真:内田 涼