ハイパープロジェクション演劇「ハイキュー!!」 (C)HF/S・HPEH ハイパープロジェクション演劇「ハイキュー!!」 (C)HF/S・HPEH

その日、劇場に訪れたすべての観客が度肝を抜かれたことだろう。それは、単行本累計発行部数1800万部突破、「週刊少年ジャンプ」(集英社)にて絶賛連載中の大人気バレーボール漫画「ハイキュー!!」の舞台。

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斜めになった八百屋舞台の奥、ボールを受けるため構えた日向翔陽(須賀健太)がいる。その力強いジャンプとともに群集に担がれ、ゆっくりと空へと舞う。同時にぐるりとステージが回り、舞台奥のステージに向かって鋭くボールが打ち込まれ、映像が炸裂する──なんだ、これは?

終演後の囲み取材で、主人公・日向翔陽役の須賀健太が「原作の中に『頂の景色』という言葉が出てきますが、今回、僕らは2.5次元の頂を見せます」と力強く語った通り、そこにはまさに「2.5次元作品」としてだけでなくすべての演劇作品のなか、より高みを目指す本気がつまっていた。

物語はバレーに魅せられた、日向翔陽の成長譚。偶然観た烏野高校の試合をキッカケに進学、同じ新入生にして相棒となる影山飛雄(木村達成)とぶつかり合いながらも次第に心を通わせ、選手としての一歩を踏み出すまでが描かれる。

まず演出がとんでもない。
八百屋と呼ばれる舞台の上から奥の壁まで全面に使い、映像で青空や町並みといった景色や漫画のコマ割りを再現、さらには試合の激しさの表現、果てはキャストの心情までが雄弁に映し出される。さらにステージ中央が円形に抜けターンテーブルのように稼働、向き合うキャストがぐるりと周り、双方の表情を客席に届けるといったさまざまな技術が駆使され、小気味良い楽曲が場面を盛り上げる。

しかし、なんといっても、その真ん中で役を演じる役者がすごい。
傾斜したステージにもかかわらず、実際のボールを使い(!)、軽やかに動き回り、それぞれの葛藤や思いを伝える。日向は己の技術の無さから、影山は自己中心的なプレイから試合に敗退した過去を持つ。そんなふたりは、強く願う。
「まだ、コートに立っていたい……!」

やがて、かつて「王様」と揶揄された影山は「独りじゃない」ということを思い知り、セッターとして初めて、日向という仲間のためにトスをあげる。そんな彼らを温かく見守る先輩たち。一幕では立ちはだかるライバル校・青葉城西高校との練習試合が描かれ、二幕では烏野高校排球部エースを巡る先輩たちの関係がつづられる──そこにあるのは生身の人間が汗をかく、舞台。

「ハイテクと汗臭さの融合」と語った、演出家・ウォーリー木下の言葉通り、演劇の新たな可能性を示唆した本公演は、11月23日(月・祝)まで東京・AiiA 2.5 Theater Tokyoにて上演。以後、大阪、宮城、東京凱旋と続く。

取材・文:おーちようこ