21:9の横長スマホ「Xperia 1」はエンタメ体験を一新する完成度の高いスマホだった!

ソニーモバイルコミュニケーションズのフラグシップスマホ「Xperia 1」を国内の大手通信キャリアが6月中旬から揃って取り扱う。世界初の約6.5インチ、4K/HDR対応有機ELディスプレイを搭載するスマホをエンターテインメント性能を中心にレビューしよう。

ワイドな21:9の大画面。活かせるコンテンツは?

Xperia 1は一見してそのデザインが従来のスマホと少し違っている。そう、ディスプレイの長辺側がとても長いのだ。21:9という、シネマスコープと呼ばれる映画のワイドスクリーンサイズと同じアスペクト比率だ。ソニーではこの大画面が生み出すXperia 1の体験を「CinemaWide」と名付けてデザインのコンセプト名称にもしている。

ソニーは本機のためにモバイル端末向けの映像エンジンを「X1 for mobile」として新規に開発した。ソニーの業務用マスターモニターは映画やテレビなど、映像コンテンツを製作するプロフェッショナルのリファレンスとして圧倒的に支持されている。Xperia 1のディスプレイの映像はソニーのマスターモニター「BVMシリーズ」の開発者と、ソニー・ピクチャーズ・エンターテインメントのクリエイターの協力を得てチューニングを仕上げたものだという。

アスペクト比率21:9の大画面で、たっぷりの没入感とともに楽しめるコンテンツはNetflixにAmazonプライム・ビデオ、Huluなどの定額制動画配信サービスで見つけることができる。Netflixの場合はHD画質によるコンテンツ視聴を楽しむためにスタンダード、またはプレミアムどちらかのプランに登録しなければならないが、21:9のアスペクト比でつくられているコンテンツは『ラ・ラ・ランド』や『BLAME!』『イングロリアス・バスターズ』など映画系にわりと多く見つかる。

画質は“さすが”と思わず唸り声を上げてしまうほど完成度が高い。自然な色合いと明暗の再現力がとても高く、画面の向こうに広がる映画の舞台の空気感までもが伝わってくる。何より本体を横に構えたときのまるで映画館のスクリーンが手のひらの中に収まっているような迫力満点の体験は、ほかのスマホでは味わえない。期待していた以上の満足感だ。

ディスプレイの画質を思いのままにカスタマイズできる

ちなみにこのX1 for mobileエンジンがあらゆる映像や静止画を高精細にアップコンバート処理をかけて表示してくれるため、4Kに満たない解像度のネット動画も活き活きとした映像が楽しめる。

ユーザーが画質の設定を好みに合わせてカスタマイズできるようになったこともXperia 1の進化したポイントだ。画面設定をタップして「画質設定」に入ると、色域とコントラストの値をプリセットした「クリエイターモード」と「スタンダードモード」の二つが並んでいる。

前者は製作者の意図を反映したHDR映像を表示するために作られたモードであり、こちらにスイッチすると色温度の低い暖かみのある画になる。ネットブラウジングやゲームなど日常よく利用するアプリやコンテンツは、白色がパリッと映えるスダンダードモードの方が見やすい場合もありそうだ。Netflixアプリを立ち上げて動画を見るときだけクリエイターモードに切り替えられる便利な機能もある。上手に使いこなしたい。

Xperia初のドルビーアトモス対応モデル

そしてXperia 1はソニーのXperiaシリーズとして初めて、ドルビーの立体音響技術であるドルビーアトモスに対応したスマホだ。ドルビーアトモス対応のモバイル端末自体は今では珍しくないが、Xperia 1はソニー・ピクチャーズ・エンタテインメントと連携して音のチューニングを細かなところまで追い込んでいる。21:9の大きな画面と連携した“画音一体”の上質な没入体験を目指したところに注目したい。

ドルビーアトモスの機能はオン・オフを切り替えて使える。音設定をタップして「オーディオ設定」に入ると「Dolby Atmos」の詳細設定が現れる。

タップして中に入ると、ドルビーアトモスの音声がダイナミック/映画/音楽/カスタムから選べる。この中の「映画」と「音楽」は、そのパラメータをソニーがXperia 1のため独自にチューニングしてドルビーからお墨付きをもらって搭載した味付けの効いたモードになる。

ドルビーアトモスの音声は本体内蔵スピーカーによる再生だけではなく、USB type-Cと3.5mmアナログイヤホンジャックの変換アダプターを介してヘッドホンやイヤホンでも楽しめる。ソニーに提供してもらったドルビーアトモスのデモンストレーション用に製作された映画『ジュマンジ/ウェルカム・トゥ・ジャングル』のトレーラーを視聴してみると、効果音が頭の後ろ側にぐるりと回り込むリアルなサラウンド感が得られた。目線より高い位置から物体が落ちてくる映像も、鮮明な効果音の移動感がとてもリアルだ。ドルビーアトモスならではの体験がしっかりと肉付けされている。

内蔵スピーカーの音が力強く、本体を手で構えて鑑賞する距離感であれば、あまり音量を上げなくてもクリアで切れ味の良い効果音、セリフが聴こえる。どちらかと言えばチープな印象だった、スマホの内蔵スピーカーの常識を変えるものだ。もちろんアウトドアや夜間など、音漏れを避けてコンテンツを楽しみたい時にはヘッドホンやイヤホンも使えるので心配ない。筆者がこれまでに体験してきたいくつかのドルビーアトモス対応をうたうモバイル端末の中で、Xperia 1のサラウンド再生の完成度は間違いなくナンバーワンだと思う。

“長い”本体の操作性は大丈夫?

約6.5インチの長く大きなディスプレイはエンターテインメント体験にはもってこいだが、普段使いの場合は操作がしづらくないのか気になるところだろう。

Xperia 1は本体の横幅が約72.0mm、厚みが約8.8mmと、それぞれに現行モデルである約6.0インチのXperia XZ3(横幅約73.0mm/厚み約9.9mm)よりもわずかにコンパクトでスリム。筆者は男性にしては手が小さい方だが、Xperia 1は片手で心地よく握って操作できる。

ただ、やはり縦方向はXperia XZ3の約158mmよりも10mm近く長い約167mmになるので、片手で本体の下側を握ると親指を画面の上まで一気に伸ばせない。Web検索やメッセージの入力は両手で操作するか、場合によっては片手モードも上手に使いこなしたい。

アスペクト比率21:9の“長い”画面を上手に活用できるように「21:9 マルチウィンドウ」という機能も新設されている。こちらは画面を半々、または上下のどちらかに寄せて3対2の割合で分割して、2つのアプリを同時に表示できる機能だ。

3対2の割合にすると、例えば上側にYouTubeを小さい横置き16:9の映像として表示しながら、下側にも縦置き16:9の画面を同時に表示できる。例えばYouTubeを見ながら関連する情報をWebで調べるといった具合に上手に活用したい。

YouTubeの動画をみながら内容をWebブラウザで調べるなど、

大画面を活かしたいろいろな使い方が広がる

本体のサイズについて一つ注意を促しておきたいことは、Xperia 1は長辺が約167mmもあるスマホなので、ズボンのお尻のポケットに入れて持ち歩くのはさまざまなリスクを伴うだろう。なので控えた方が良いと思う。余談だが、日常生活に欠かせないアイテムであるスマホが大型化していくと、私たちの衣服やバッグのデザインにも今後は影響を与えそうだ。

他の追随を許さない完成度の高さ

2019年は年明けからディスプレイを折りたためるスマホの話題で盛り上がっているが、Xperia 1はデザインと操作性を犠牲にすることなく、大画面ならではのリッチなエンターテインメント性を追求したバランスの良さがとても魅力的なスマホだ。ライバル他社はやみくもにスマホを大画面化したり、折りたたむ前にもっとユーザー体験を高めるためにやるべきことが沢山あるのだということを、ぜひ本機を手本にして探求して欲しいと思う。

なお今回借りることができた試作機はまだカメラがテストできる段階まで仕上がっていなかったので、ハンドリングは行わなかった。Xperiaシリーズ初のトリプルレンズカメラでどんな写真や動画が撮れるのかも楽しみだ。ソニーの最先端が詰まったXperia 1の発売を期待して待とう。(フリーライター・山本敦)