熱い友情が生んだコラボによる本人役での登場!
『リングにかけろ』出演の永田裕志選手

続いて紹介する『リングにかけろ』は、原作者の漫画家さんと親友同士だったことで、プロレスラーが文字通りの"友情出演"でアニメ版に登場したという珍しい作品です。

少年漫画界の大御所である車田正美先生のボクシング漫画『リングにかけろ』には、車田先生の友人である新日本プロレスの永田裕志選手が声優として……しかも、永田選手本人役で登場!

アニメ版の永田選手は、卑劣な不良たちに囲まれリンチに合う主役キャラの一人、香取石松の前に颯爽と現れ、必殺技を次々に繰り出してバッタバッタと不良をなぎ倒すというかなり美味しい役どころで出演しています。

普段は、リングの上で観ているプロレスラーが車田先生のタッチで二次元のキャラクターになっていることに加えて、本人が声を当てているというシチュエーションが堪らなくシュールなのですが、この際、プロレスファンとして細かいことはいいのです!

そして、肝心のアニメ声優としての演技力は、かなり……微妙な気がするのですが、これまた細かいことは決して気にしてはいけません!

思えば、このアニメが放映されていた2000年代のプロレス界は総合格闘技ブームを受けて、苦境に立たされていた頃。集客に苦しみ、プロレスラーは、総合格闘家の前に連戦連敗。まさに、プロレス苦難の時代。当然、業界最大手の団体である新日本プロレスにも激震が走り続けていた時期です。

そんな激動の新日本プロレスにおいて、エースとして様々な障害に対し果敢に挑み続けていたのが誰あろう永田選手。時に怒り、時に苦杯を喫し、時に理不尽な仕打ちに涙しながらも文字通り身体を張って新日本プロレスを守り抜いてきた永田選手の献身的な戦いぶりは、ファンならば知らぬ者はいないハズ。その頑張りがあったからこそ、今の新日人気があるのです。

声優としてはやや拙くとも、何事にも一生懸命な永田選手の姿勢は素晴らしく、そして、どうしようもない程に愛おしい。

更に、車田先生と永田選手の友情パワーを介したアニメとプロレスのコラボは、映画『聖闘士星矢 天界編 序奏~overture~』でも実現。この作品に永田選手は、何と神様の役で出演しています。こちらも熱狂的永田ファン(通称"ナガラー")ならば必見です!

これぞタッグマッチの妙技!?
『いぬかみっ!』出演のDRAGON GATE所属選手

プロレスにおける魅力の一つがタッグマッチやユニット抗争といった形でリングで繰り広げられる多人数バトルだと思います。

時にダイナミックに、時にスピーディーに、多くの選手が入り乱れながら、鍛え上げられた肉体をぶつけ合う姿は、他の格闘技では味わえないプロレス特有の醍醐味といえるでしょう。

プロレスラーのアニメ作品への声優参加も、藤田選手や永田選手のように単身で挑むケースだけではなく、時には、他の選手とタッグを組んで乗り込む場合もあります。

人気声優の堀江由衣さん主演作でライトノベルを原作としたアニメ『いぬかみっ!』は、まさにそうした作品の一つ。

このアニメの第二話『マッチョがぺろぺろっ!』というエピソードには、DRAGON GATE所属の堀口元気選手、ドラゴン・キッド選手、谷嵜なおき選手、そして、斎藤了選手という四人のレスラーがゲスト出演しています。

スピード感に溢れた華やかな試合が大きな魅力であり、更に、"イケメン"レスラーも数多く所属している為、女性のプロレスファンから絶大な支持を受けているDRAGON GATE。

そんなドラゲーの中でも、特に試合運びの巧さに定評がある技巧派のレスラーが集まっているのですから、これはアニメの声優としても魅せてくれるのではないか……と思いきや、ドラゲーレスラーが演じているキャラクターというのが「犬の霊に取り憑かれた褌一丁のマッチョマンたち(と、そのマッチョマンに手を焼いているお寺の住職)」という壮絶なインパクトを誇る奇怪な役どころ!

ストーリーも半裸のマッチョマンが犬のように主人公にじゃれあって来る……というシュール過ぎるコメディ展開で、これまたインパクト大なエピソードとなっています。

とはいえ、声優として突拍子もないキャラクター、ストーリーにも果敢に挑んでみせるその姿からは、死力を尽くした真っ向勝負は勿論のこと、観客に笑顔を届けるコミカルマッチまで、ありとあらゆるプロレスのスタイルに対応できるドラゲーレスラーの懐の深さとエンターテイナーとしての矜持が感じられる……気がしないでもないです!

ここは、選手一同、力を合わせての熱演を評価したいと思います!

なお、唯一まともに人語の台詞を喋る住職役の堀口元気選手は、マイクの巧さもあってかなかなかに声優としても味のある演技をされています。堀口選手の器用さが垣間見える見どころの一つですよ。