チョ・ソンジン チョ・ソンジン

去る10月、ポーランドのワルシャワで開催されたショパン国際ピアノコンクール。この世界的ピアニストへの登竜門で、韓国人として初めて優勝したチョ・ソンジンの来日記者会見が、11月18日、駐日ポーランド共和国大使館で行われた。

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チョ・ソンジンは冒頭のコメントで、「ショパンコンクールという場で第1位をいただき光栄に思います。ショパンの祖国でショパンを演奏し、ポーランドのオーケストラと共演できたことは生涯忘れられない特別な時間となりました。現地にはたくさんの日本の方が聴きに来ていて、ショパンの音楽を心から愛しているのだと思いました。応援してくださった方に、お礼を申し上げたいです」と、日本の聴衆へ感謝の言葉を口にした。

彼が日本のクラシック音楽ファンから最初に大きな注目を集めたのは2009年、15歳の若さで浜松国際ピアノコンクールにアジア人として初めて優勝に輝いたときのこと。その後、2011年にはチャイコフスキー国際コンクールで第3位に入賞。その翌年からは、パリ国立高等音楽院でミシェル・ベロフ教授のもと研鑽を積んでいる。2009年当時と今の自身の音楽的な変化を尋ねられると「周りの方からいわれることはありますが、自分では何が変わったのかわからないものです」と答えた。

実際、この6年間でチョ・ソンジンの音楽は深化をとげ、今回のコンクール中も、第1次からファイナルまで完成度が高く気品あるショパンを聴かせた。各ステージを振り返り、自身で満足のいく演奏ができた作品を尋ねられると「とても緊張していたためどんな演奏をしていたのか覚えていなくて、あとからYouTubeでチェックするまでわかりませんでしたが……『英雄ポロネーズ』は良かったと思います。あと、『24のプレリュード』も悪くなかったかな」とはにかんだ笑顔を見せ、会場の微笑みを誘った。

彼はこの『英雄ポロネーズ』の演奏でポロネーズ賞を受賞。一方の『24のプレリュード』は、「ショパンの中でも特別に好き」な作品で、セミファイナルの課題曲が今回より“ソナタ第2番、第3番または『24のプレリュード』”から選択可能となったことで選曲したという。いずれも、同11月18日に緊急発売されたコンクールのライブ盤に収録されており、高い集中のもと奏でられたすばらしい演奏を聴くことができる。

すでに祖国韓国では、このライブ盤がクラシックCDとして異例のセールスを記録。またガラコンサートのチケットが“50分で完売”するなどのニュースも伝えられている。「こうしたきっかけから、若い年代の方々がクラシックを愛してくれて、それが長く続いていくことを願っています。優勝を機にたくさんのメディアの取材を受けるようになりました。有名になるのもとても良いことですが、僕にとってはすばらしい音楽家になることのほうが大切です。これからも研鑽を積んで、良い音楽を届けていきたい」と、今後への抱負を語った。

取材・文:高坂はる香(音楽ライター)