『黄金のアデーレ 名画の帰還』に主演したヘレン・ミレン

『クィーン』や『RED』シリーズで知られるオスカー女優ヘレン・ミレンが『黄金のアデーレ 名画の帰還』で主演を務めている。本作でミレンは、自身が演じた実在の人物マリアが生きてきた時代と戦争の痛ましい記憶を調査し、自分の記憶の中で蘇らせる作業に注力したと語る。

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本作のタイトルになっている『黄金のアデーレ』はグスタフ・クリムトの作品で、かつてマリアの家に飾られていたが、ナチスが絵画を没収。やがて激動の歴史の中でマリアは国を離れ、オーストリアの美術館にあの絵画が展示されていることを知る。そこで彼女は若い弁護士のランディの助けを借りて、オーストリア政府に絵画の返還を要求。現在では“国の宝”になっている絵画を政府が簡単に返すわけがなく、マリアたちはオーストリアへと向かう。

ミレンは『クィーン』でも実在の人物を演じたが、本作でも可能な限り、マリア本人の外見に似せるよう努力した。「目の色をこげ茶にするためにカラー・コンタクトレンズを使用したわ。他には立ち姿や手振り身振り、声の出し方など、本人を特徴付けるすべての要素が重要になってくるわ」。しかし、彼女が最も重視したのは「その人物の心の探求」だ。「私はちょうど大戦直後に生まれたので、戦争は一切体験していないの。私はマリアが生きた時代を自分の中で再生し、歴史を読み直し、自分の記憶の中で当時を蘇らせる作業を行ったの。本当はそんなこと、わざわざしたくないわよね。居心地悪いし、衝撃的な悲劇で、残酷で、野蛮な記憶だもの。過去に戻って生きてみたい時代じゃ決してないわ。だけど、キャラクターに対して忠実で誠実でありたいために通過しなければならない作業だったの」

マリアは絵の返還訴訟を起こすが、その過程で何度も立ち止まり、過去と向き合わざるをえないことに怯える。「ウィーン市長が私に語ったように、マリア・アルトマンはウィーンがその過去に対して誠実であることがどれほど大切なことかを教えてくれた人だ、と。過去に対して目をそむけることは多くの人がしてしまうことだけど、過去を隠さずに事実を直視することはとても重要なことだと思うわ」

『黄金のアデーレ 名画の帰還』
11月27日(金)、TOHOシネマズ シャンテほか全国ロードショー

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