鉄道マニア御用達のB5版で分厚い全国時刻表。重さは1kg以下という決まりがある。定期刊行物などを送る「第三種郵便」の規定が原則1kg以下であるためだ。路線が増えても重さは維持しなければならないので、毎号編集上のさまざまな工夫が施されているという。この1kgという重さ、さまざまなモノの重さのしきい値になっているように思える。ノートPCもまた「1kgを切る」というのが軽量モデルの目標値になっている。鞄の中に入れて日々持ち歩くことを考えると、これぐらいの軽さであってほしい。頑丈で軽量なノートPCということなら、それだけで大きな付加価値だ。

1kg未満のノートPC市場の勢力図をチェックしよう。10月のメーカー別販売台数シェアは1位がASUS、2位NEC、3位パナソニックの順だった。ASUSはこの2月に投入した「Eeebook X205TA」が売れ、10月の台数シェア44.3%を獲得した。重さ980gと軽量ながら、平均単価(税別、以下同)3万円台前半と破格の価格で登場。5月に平均単価がこなれてくると台数が一気に伸び、それまでトップだったNECを一気に逆転した。

2位はNEC。シェアは41.4%でASUSとほぼ同率だ。超軽量を付加価値にした「LAVIE Hybrid ZERO」が好調。10月現在で13万円弱という高価な製品ながら4分の1以下の価格のASUSの製品と同じくらい売れている。武器は、13.3インチで779gと驚異的な軽さだ。3位はパナソニックでシェア11.4%。10.1インチの2in1でわずか745gの「Let's note RZ4」によるものだ。

軽さも700g台になると、もはやPCという感じはしない。特に13.3インチの「LAVIE Hybrid ZERO」は、それなりの画面サイズがあるため、本当に動くのかと思うほど軽く感じる。それでも立派にPCとして稼働しているところを見ると、ある種の感動すらおぼえる。

一方、ノートPC市場全体では、コモディティ化が進み、何を買っても変わらない感が強くなっている。実際、販売台数前年比は惨憺たるもので、2014年5月以降18か月連続で前年割れ。ぱっとしない2桁割れの状況が続いている。そんな中、1kg未満の軽量ノートは、構成比で5~10%程度の小さな市場ではあるものの、前年比で200%以上を維持しており好調だ。

スマートフォンがPCの代替として使われるようになり、さらにタブレット端末も登場したことで、ノートPCの位置づけは以前と比べ明らかに変わった。しかし、文字の入力や編集、画像や動画の加工など、情報生産型の作業ではノートPCの便利さは変わらない。そこに何か新たな価値が加われば、市場は息を吹き返す。軽量ノートが受けているという一つの現象は、これからのノートPCが進化すべ方向を指し示す一つの道、ということができるだろう。(BCN 道越一郎)