マノエル・ド・オリヴェイラ

今年、106歳でこの世を去った巨匠マノエル・ド・オリヴェイラの幻の傑作『アンジェリカの微笑み』が今週末から公開になるが、来月にオリヴェイラ監督の追悼特集“永遠のオリヴェイラ マノエル・ド・オリヴェイラ監督追悼特集Parte1”が東京渋谷のユーロスペースで開催されることが決定した。

その他の画像

オリヴェイラ監督は現役最高齢監督して次々に新作を発表し続けたポルトガルの巨匠監督で、追悼特集では遺作となった『レステロの老人』が上映されるほか、1942年の『アニキ・ボボ』、1990年の『ノン、あるいは支配の空しい栄光』、1993年の『アブラハム渓谷』など全9作品を上映。来夏以降には日本未公開作なども加えた追悼企画Parte2が開催され、全国を巡回する予定だ。

今週末から公開になる『アンジェリカの微笑み』は、オリヴェイラ監督が長年、構想し続けた題材を2010年に映画化した念願の1作ながら、日本で一般公開されていなかった“幻の傑作”だ。オリヴェイラ監督は生前「この映画が実現することはあるまいと思っていた」と語っていたが、無事に作品を完成させ、美しい微笑みを浮かべたまま亡くなった美女に魅了されてしまった青年の行く末を壮大なスケールと精緻な描写で描き出している。「私は(1952年に書いた脚本を)現代の状況に合うように翻案したんだ。最初は第二次世界大戦直後に企画したものだ。私は自分に起きたことを、全く違う文脈で使うんだよ。私はそれからインスパイアされて、アンジェリカに安堵の形を見出す迫害された男のことを考えた。つまり、彼女が彼に微笑む時、そして彼が彼女の魂が体から離れるのを見る時のことだ。エッセンスはイザクの宿命、彼の運命だよ。この映画は始まった瞬間から、すべてイザクの話さ。愛は抽象的で、絶対的なものだ」。

オリヴェイラ監督は様々なドラマを描きながら、同時に自身のルーツやポルトガルの歴史を作品に織り込み、世界中の映画ファンをうならせてきた。監督が半世紀もの間、脚本を温めてきた『アンジェリカの微笑み』と、彼の生涯を追った追悼特集を続けて観ることで、これまで気づかなかったオリヴェイラ監督の魅力や新たな側面に気づくのではないだろうか。

『アンジェリカの微笑み』
12月5日(土) Bunkamuraル・シネマ他にて全国ロードショー

永遠のオリヴェイラ マノエル・ド・オリヴェイラ監督追悼特集 Parte1
特別上映作品『レステロの老人』
上映作品
『アニキ・ボボ』
『春の劇』
『過去と現在 昔の恋、今の恋』
『カニバイシュ』
『ノン、あるいは支配の空しい栄光』
『神曲』
『アブラハム渓谷』
『階段通りの人々』
日時:2016年1月23日(土)~2月5日(金)
会場:ユーロスペース