テレビ中継を観ながら「ボランチって何?」と質問してサッカーファンに呆れられる。球場では大事な場面でビールを買いに走り、阪神ファンの友だちに怒られる。そんな私が、自らラグビー観戦に行く日が来ようとは……。

ラグビー トップリーグ チケット情報

W杯のサモア戦。五郎丸歩選手の蹴ったボールが鮮やかな弧を描いてゴールをとび越えたとき、ザワザワザワッと興奮が全身を駆け抜けた。「あのキックを生で観たい!」。そんな願望をいだき続け、ついに11月21日。五郎丸選手の本拠地・ヤマハスタジアムに、トップリーグを観におとずれた。

スタジアムに到着したのは試合開始40分前。コートでは選手が最後の調整をしている。みんな体が大きいなあ、などと思いながらコートを眺めまわしていると……いた、五郎丸選手だ!

ウェアのそでをまくり、ボールをセットする背番号15番。客席のあちこちから、「やるかな、あのポーズ」と、期待のこもった声が聞こえてくる。手で進路をはかり、後ろに3歩、左に2歩。そして、すっかり有名になった両手を結ぶポーズ。次の瞬間ダッと駆け出し、蹴られたボールがゴールを軽々とび越えた。スタンドは拍手の嵐。試合前から、早くも熱いものがこみ上げてくる。

13時ちょうどに試合開始がつげられ、ボールめがけて選手が殺到する。横へ横へとつながるパス。そのパスを阻止するため、相手チームがタックルを仕掛ける。あまりの速さに、視線はコート上を前後左右に行ったり来たり、めまぐるしい。

開始15分。ヤマハのシアレ・ピウタウ選手がトライし、ようやく初得点を決めた。スタンドにサックスブルーの旗が泳ぎ、歓声が広がる。やった、と夢中で拍手をしていると、前席のおじさんの旗が顔面にビタッ。風になびいて貼りついた。おじさんは気づかず「イエー」などと叫んでいる。そうこうしているうちに、「五郎丸選手がコンバージョンゴールを決めました」というアナウンス。ああっ、キックを見逃しちゃったよ……。

ヤマハは順調に得点をかさね、前半残り30秒。ついに、五郎丸選手がペナルティゴールを放つ瞬間がやってきた。「難しい位置からのキックです」と実況席からのアナウンス。場内の視線が五郎丸選手に集中し、空気がピンと張りつめる。ボールを見つめて大きくひと息。ルーティンを終えると、迷いのない美しいフォームでボールを蹴り上げる。ゴールの成功に、スタンドはふたたび大歓声に包まれた。

後半戦もあわせて、この日五郎丸選手が決めたゴールは6本。印象的だったのはやはり、前半終了間際のあのペナルティゴールだ。会場全体が息をつめて待つ数秒の静けさ。高く舞うボール、広がる熱気。「さすがだなあ、素敵だなあ」と、もう頭の中は五郎丸選手でいっぱいだ。

今回は子どもも大勢来ていて、試合終了後には選手とハイタッチできる羨ましすぎるサービスも。五郎丸選手も子ども1人1人と笑顔でハイタッチ。「ふむ、今度は子連れのママと一緒に来ようか」と、早くも次の観戦に向けて思いを巡らせたのだった。

取材・文:東谷好依

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