世田谷パブリックシアター平成24年度の劇場プログラムに関する発表会見より 世田谷パブリックシアター平成24年度の劇場プログラムに関する発表会見より

東京・世田谷区の公共劇場、世田谷パブリックシアターの平成24年度の劇場プログラムに関する発表会が4月11日に行われた。会見には芸術監督を務める野村萬斎と、主催公演を担当する栗山民也、長塚圭史、三浦康嗣、白井晃、森新太郎が登壇した。

『南部高速道路』チケット情報

会見で萬斎は「劇場も15周年になります。古典から新作まで、時代を意識しながら民間では出来ないことをやりたい」と挨拶。その中で、昨今の税に対する関心の高さを意識してか、「みなさんの税金を使ってやっていることもあります。売れるに越したことはないですが、(出席者に向けて)価値のある作品づくりをお願いしたい」との要望も。それに応えるように、6月にラテンアメリカの作家、フリオ・コルタサルの短篇小説『南部高速道路』をもとに新たな作品を作る長塚は「(この本は)渋滞に巻き込まれ、終わらないというシンプルな話。頼もしい俳優に集まってもらい、いい形で稽古も進めている。税金も無駄にしないんじゃないか」と自信をのぞかせた。

6月はもう1本、井上ひさし生誕77フェスティバル2012の第4弾として萬斎主演で『藪原検校(やぶはらけんぎょう)』を上演する。これは井上ひさしの存命中から企画していたもの。演出の栗山は「井上さんの芝居は声が重要なファクターになる。(萬斎主演の)『国盗人』を観て、(主人公の)杉の市と萬斎さんがなぜかだぶった」とキャスティングした理由を明かした。これを受けて萬斎は「指名してもらい光栄です。久々に腰が上がりました。『オイディプス』以来です」と嬉しそうに話していた。また、井上ひさしの希望もあり、初演時と同じく井上の兄(井上滋)の音楽を使用する。

10月は3人の先鋭的作家がタッグを組み、既存のミュージカルや音楽劇に囚われない、次世代の音楽劇『魔笛』(仮)を上演する。脚本は第54回岸田國士戯曲賞を受賞した柴幸男、音楽は□□□(クチロロ)の三浦康嗣、振付はモモンガ・コンプレックス主宰の白神ももこが担当。ただし、三浦曰く「現状ではどういうものを作るのかまったく決まっていない」そうで、担当するパートも変わる可能性があるとか。タイトルもモーツァルトとは関係ないと説明し、「演劇を観に来ているはずなのに、いつの間にか音楽のルールで観ているような錯覚」といった、音楽と演劇の壁を越えたようなものを目指していきたいと意欲を見せた。

この他、11月は川村毅が書き下ろした作品を白井晃が演出する、死刑制度に纏わる話『「4」four』を、12月は英国の人気劇作家リチャード・ビーンの作品を、日本初登場で上演。演出は期待の若手森新太郎が担当する。2013年2月から3月は「シェイクスピア×野村萬斎」の第3弾として、2010年に初演した『マクベス』を再演。演出も手がけた萬斎は「決まってないが海外出品も考えている」と構想を明かした。

『南部高速道路』は6月4日(月)から24日(日)までシアタートラム、『藪原検校』は6月12日(火)から7月1日(日)まで世田谷パブリックシアターで上演。その他の公演詳細は公式サイトで随時発表する。