12月9日にオープンするシダックス×ビックカメラの新店舗

シダックスは12月8日、新宿・歌舞伎町でビックカメラとのコラボレーションでリニューアルオープンする新宿セントラルロードクラブの内覧会を開催した。

●「食・エンターテインメント・物販」を一店舗内で提供

シダックスは2015年9月に訪日外国人の需要に対応するために、業態開発・運営を目的とした事業子会社シダックストラベラーズコミュニティー(STC)を設立。異業種ながら、同じくインバウンドの収益強化を図るビックカメラと目論みが一致し、今回の協業に至った。

内覧会でSTCの取締役・吉澤勉 事業本部長は「外国人旅行者が東京を訪問中に行った活動の1位は『日本食を楽しむ』、2位は『ショッピング』」という東京都が発表しているデータを紹介。「新店舗はこのツートップを内包する」と新業態の強みを語った。

シダックスの「個室レストラン」としての一面にもメリットを見出している。「訪日外国人は10人以上で入れる飲食店を探していることが多い。東京だと予約なしにそれだけの人数を受け入れることができる店舗は限られている。個室を希望するならなおさら。その点、新店舗は30人程度を収容する大部屋や和のテイストにこだわったリッチルームを備えており、このニーズに対応できる」(同氏)

一方のビックカメラは歌舞伎町を訪問する観光客の集客に意欲をみせる。新宿では東口・西口に大型店舗を展開しているが、歌舞伎町は靖国通りを挟んでいるため商圏が分断しており、潜在的顧客を逃している可能性がある。このエリアは競合量販店やドラッグストアが出店しており、免税品の購入者も多い。

同社の堀越雄 執行役員は「カラオケを目的とした観光客、近辺のホテルの宿泊者などを取り込みたい。ビックカメラではなく『ビックドラッグ』としたのは規模が小さいから。だが日用品だけでなく厳選した売れ筋家電も販売する」と他店舗と異なるポイントを説明。営業時間も歌舞伎町シフトに合わせる。通常店舗は10時~22時だが、11時~23時と1時間後ろ倒し。好評を得ている空港やホテルへの配送サービスにも対応する。

●訪日外国人の嗜好に合わせ厳選した「和食」と「家電」

シダックスが特に重視したのは、訪日外国人に提供する「食」だ。新店舗限定販売の10品の日本料理を考案。伝統的な和食から日本人のソウルフードといえる、すきやきやラーメンまで揃える。

内覧会では、目玉となる特製和膳セットの試食を実施。「銀鱈の柚庵焼き」や「紅鮭数の子 麹和え」など、本格的な日本料理の小鉢がずらっと並び、観光客が求める「日本らしさ」を凝縮。汁物、茶碗蒸し、炊き込みご飯、和菓子も付き、ボリュームたっぷりだ。日本人でなくとも抵抗なく食すことができる親しみのある味付けが印象的だった。価格は3時間のルーム料金込みで、税込み3500円。日本の娯楽と食が同時に体験できることを考えれば、お得な値段設定だ。

このほか、金箔を乗せた「こぼれいくらの升寿司」のような見た目の美しさにこだわったメニューや、具だくさんの贅沢なお好み焼きなど、工夫をこらした料理も用意する。

2フロア展開の「ビックドラッグ」は、1階で医療品や日用品、地下1階で家電や文具、工芸品などを取り扱う。フロア面積は広くないが、これまでビックカメラが蓄積してきたノウハウや販売実績のデータを駆使し、訪日外国人から高い人気を誇る製品を厳選して展示する。

両社にとって、訪日観光客の利用状況を検証・分析する「実験の場」でもある新店舗。オープン後も、インバウンド需要獲得に向けた店舗設計やサービス拡充に柔軟に対応していく。将来的には全国の主要拠点でも、同様のインバウンド対応を図る方針だ。(BCNランキング編集部・大蔵 大輔)