4.曖昧な結末のもの

“子どもを食べられてしまったお母さんヤギは狼のお腹をハサミで切りました。子ヤギたちを救い出した後、石を詰めて縫い合わせました。そして、皆で狼を井戸に落としました”『狼と七匹の子ヤギ』

なんという残酷な結末でしょう。
容赦なく母ヤギを筆頭にヤギ達は狼に敵討ちをします。こんな絵本を与えたら「子どもが将来、残酷な人間になってしまうのでは?」と心配になりますよね。
実際、昔話は結構、結末が怖いものが多いです。

『白雪姫』
……毒りんごを食べさせて姫を殺そうとした魔女。白雪姫は王子との婚礼に招き、赤く焼けた靴を魔女に履かせ、死ぬまで躍らせたという結末

『狼少年』(=嘘をつく少年)
……「狼が来た!」と何度も嘘をついた少年。本当に狼が来た時、誰からも信用されず、最後は食べられてしまいましたという結末

『三匹の子豚』
……親と元から離れた子豚たち。楽をしようとワラの家を建てた長男、木の家を建てた次男は家を壊され狼に食べられてしまう。時間をかけて頑丈なレンガの家を作った三男だけが助かる。三男は最後は煙突から入ってきた狼を釜茹でにする。

日本昔話、グリム童話、イソップ物語、怖いものが多くあります。でも、子どもは明確に書かれている文章を通して、悪者が最後に痛い目にあうことで「善が栄え、悪が滅びる」という勧善懲悪、「人は良い行いをすれば良い報いがあり、悪い行いをすれば悪い報いはある」という因果応報を学ぶことが出来ます。

もし、結末が曖昧だったらどうでしょう?

例えば狼と七匹の子ヤギの物語で「狼とヤギたちは仲直りしていつまでも幸せに暮らしました」と最後が終わったらどうでしょうか? 自分の子どもを殺されて許す親がどこにいるでしょうか?「悪いことをしても許される」と学習してしまう危険があります。

人は生まれながらにして道徳心・良心は持っていません。躾により養われます。昔ばなしはその教材としては最適です。ですから残酷な結末のものを選びましょう。

出版社によっては読者からのクレームがあったのか、仲直りさせている文章もありますがこれでは善悪を学ぶことが出来なくなってしまいますね。

付録つきの本は「おもちゃ」!

最近、本屋は雑貨屋のようです。付録付つきの女性雑誌、ゲーム、DVDも置いてあります。絵本コーナーも同じ、おもちゃ売り場と見間違うほどです。

付録付きの絵本も段々進化しています。

・電車の絵本。「次は渋谷、渋谷、白線の後ろまでお下がりください」のリアルな構内アナウンスが流れる

・お買い物の絵本。レジのバーコードリーダーが付いている。

・ピアノの鍵盤や太鼓が付いている絵本

色もカラフルで豪華で子どもの目を引きますので、欲しがるのは当然です。でも、文章がほとんどありません。もちろん子どもが欲しがれば買ってもいいのですが、これらを絵本と捉え「これで読み聞かせした」と思わないことが大切です。

電車に興味を持っているのならば、電車を題材にした絵本など主語、述語、接続詞がきちんと使ってある絵本も読み聞かせに加えていきましょう。

付録つきの絵本は本と言うより「おもちゃ」と割り切って買うのがよいでしょう。

絵本はどうやって探せばいい?

良書は時代が変わっても50年100年と残っていきます。

昔、あなたが幼い頃、親から読んでもらった絵本でまだ売られている絵本がありますよね。これは人の心に響くものなので売れ続けています。だから増版されています。

平積みされた流行りものの絵本に目を奪われないようにしましょう。
昔から残っている絵本は良書です。自分が幼い頃、親から読んでもらった本を親になって我が子に読み聞かせるなんて素敵な光景です。

オススメは、新・講談社の絵本『かぐや姫』

講談社シリーズの絵本はそんなの意味でも素晴らしいです。
猿蟹合戦、かちかち山、舌切り雀、一寸法師などたくさんの昔話が、美しい絵と文章で書かれています。

また、以下のようにリアリティを追求している所もおすすめのポイントです。

・背景の道具もその時代に実際に使われていたものが描かれています。
・最初ページのかぐや姫に出会った頃のお爺さんお婆さんの貧しい服装が、最後のページの月に帰るかぐや姫を見送る場面では明らかに豪華な着物に変わっています。



文章で示されたことがきちんと絵にリンクしていますね。
昔話に出てくるような時代の日本には、最近の絵本でよく使われている原色や明るい色はありません。

物語を深く味わい、感性を磨くためにも、日本の昔話の絵本は「色がくすんだもの、渋い色遣いのもの」を選ぶと良いかもしれませんね。
子どもだから「鮮やかな色使いがいい」という固定観念は外しましょう。