BCNは、4月12日、記者会見を開催し、量販店の実売データ「BCNランキング」をもとに、デジタル家電市場全体やデジタルカメラ、薄型テレビ、レコーダーなどの個々のジャンルについて、最新の販売動向を説明した。テーマは「始まったデジタル家電の新局面――単価下落を止める『価値の創造』とは」。2011年3月から2012年3月までの販売台数・金額の前年同月比(伸び率)や2009年以降の平均単価の推移などを示し、直近の動きから、まだ疑問が残るとしながらも「単価下落に歯止めか」と分析した。

●「非常事態」が続いた2011年、「通常」に戻った今こそ挑戦を

2011年3月に発生した東日本大震災と、秋にタイで発生した大洪水は、国内のデジタル家電市場に大きな影響を与えた。震災は、東北地方を中心に大きな人的・物的被害や混乱をもたらし、しばらくの間、自粛ムードをもたらした。また、タイの洪水被害による工場の生産停止は、世界規模でHDDなどのパーツ類の供給不足や高騰を引き起こし、現地で生産していた一部メーカーのデジタルカメラ、インクジェットプリンタなどは品不足に陥った。特に影響の大きかったHDDは、2011年6月最終週を基準に平均単価の変動率を週次で集計した指数をみると、2TBの場合、今年1月第2週(2012年1月9日~15日)をピークに単価の上昇が止まり、以降は緩やかに下がりつつあるものの、もとの水準には戻っていない。

一方、デジタルカメラ全体の販売台数の8~9割弱を占めるレンズ一体型デジタルカメラ(コンパクトデジタルカメラ)の平均単価は、ここ数年、モデルチェンジの関係で、年間で最も安くなる1月を底に、3月は1万6000円近くまで上昇。レンズ交換型デジタルカメラ(デジタル一眼レフ・ミラーレス一眼の合計)も同様に、1月を底に上昇に転じた。また、レンズ交換型デジタルカメラの3月の販売台数は、これまで過去最大だった2010年12月を上回り、台数で前月同月比139.6%、金額で同135.8%と、前年に比べて大きく伸びた。

コンパクトデジタルカメラを例にとると、この1年の間に撮像素子が「1600万画素以上」の販売台数構成比が拡大し、高画素化が進んだ。さらに、今年2月以降、20%台から30%台前半へ、徐々に伸びつつあった「8倍以上」の高倍率ズームモデルが急伸し、3月は46.8%と半数近くを占めた。カメラの技術革新にはまだ伸びしろがあり、魅力的な新製品の投入によって拡大の余地はありそうだ。

薄型テレビは、全体では単価下落が続くものの、サイズ帯別に集計すると、最も販売台数の多い32V型がほとんどを占める「30型台」の平均単価は、2012年1月を底にわずかながら上昇に転じて下げ止まった。ただ、2011年7月24日に東北3県を除いて地上アナログ放送が終了し、買い替えを中心とした「地デジ特需」が終わった2011年8月以降、販売台数は低迷しており、2012年3月には3年前の2009年とほぼ同じ水準まで落ち込んでいる。

レコーダーも薄型テレビ同様、単価下落が続いていたが、内蔵HDDが1TB以上の大容量モデルの構成比が拡大したこともあって、2012年1月~3月のレコーダー全体の平均単価は4万円前後で推移して水準を維持した。一部のメーカーは、3番組同時に録画できるトリプルチューナーや無線LAN対応、タイムシフト視聴を前提とした「全録」機能など、HDD容量以外の差異化ポイントを打ち出し、レコーダーならではの価値創造とともに、単価下落への歯止めをかけようとしている。

パソコン(デスクトップPC・ノートPC・タブレット端末)は、個々の機種では非常に安い製品も出回っているが、全体でみると平均単価は下げ止まった感がある。販売台数は、2011年4月以降、12か月連続で前年を上回っており、特に2012年3月は前年同月比133.2%と好調だった。東日本大震災の影響を除外するために2010年と比べても127.8%と、二ケタ増となっている。タイプ別ではノートPCが7割前後を占め、残り3割弱をデスクトップPCとタブレット端末で分け合っている。3月は、アップルが新iPad(第3世代iPad)を発売した影響で、タブレット端末が13.1%、デスクトップPCが14.6%とほぼ同水準まで接近したが、通常期はデスクトップPCが2割弱を占めている。

このほか、昨年春以降、PC周辺機器のインクジェットプリンタと無線LAN機器(親機と親機を含むセット製品)が伸びている。ほぼ搭載率100%のスマートフォン、タブレット端末、ノートPCをはじめ、デスクトップPCやインクジェットプリンタなど、標準で無線LAN(Wi-Fi)に対応する機器の増加に伴い、家庭内で無線LANを利用したワイヤレスネットワークが浸透しつつあるとみられる。

こうした動きから、デジタル家電・PCに共通するキーワードとして、主にワイヤレスネットワークを活用した「つながり化」と「スマート化」を挙げた。従来のように、ケーブルやメディアを介して物理的にデータをやりとりするのではなく、ワイヤレスで直接データを送受信したり、「クラウドサービス」と呼ばれるインターネットサービスを利用してデジタルデータを保存・編集・シェアしたりと、新しい局面が始まりつつある。

その点、テレビは、リアルタイムのテレビ放送や録画した番組を視聴するだけの単なる映像表示装置としての側面が強く、今のままではやがて限界が訪れるかもしれない。その限界を打破する新たなカテゴリとして、「スマートテレビ」に期待が集まっている。すでに取り組んでいるメーカーは少なくないが、機器単独ではなく、さまざまな機器を相互に連携させ、ユーザーが楽しさや便利さを感じる価値を創造することが重要になる、とした。

*「BCNランキング」は、全国の主要家電量販店・ネットショップからパソコン本体、デジタル家電などの実売データを毎日収集・集計している実売データベースで、日本の店頭市場の約4割をカバーしています。