【真田丸 インタビュー】堺雅人(真田信繁) 「ムキムキじゃないです。筋トレせずに撮影に臨んでいます」

2016.1.1 9:00配信
真田信繁役の堺雅人

 NHKの大河ドラマ「真田丸」の主人公、真田信繁を演じる堺雅人。信繁は信濃の小国を治める父・昌幸のもとに生まれ、長い雌伏の時を経て、人生の最後にその武名をとどろかせ、“真田幸村”として後世にその名を残した。劣勢に立たされながら、大坂夏の陣で徳川家康をあと一歩のところまで追い込んだ智将、信繁の宿命と心に秘めた熱い思いを堺が語る。

 

-今回の大河ドラマの主役を引き受けた理由は?

 三谷(幸喜)さんの作品を1年間、50本演じられるというのは役者にとってすごい魅力なんです。それが理由です。

-信繁の人物像は?

 兄の信幸が信繁を評して「ものごと柔和忍辱(にんにく)にして強からず」と言っています。つまり感情を表に出さない。ほんわかとしていて一見捉えどころがなく、口数も少ないが、心に秘めた何かがあると。今回の大河では、それにプラスして近代の幕開けにふさわしい旺盛な好奇心を持った人物として描かれています。

-大泉洋さん演じる信幸はいかがですか。

 洋さんは普段コメディータッチのお芝居が多いのですが、今回は今まで見たことがない感じです。真っすぐで不器用で、でも誠実一辺倒で攻めてくる大泉洋というのは、実に魅力的です。

-それをどう受けますか。

 信繁は裏方に回ることが多い人物。なんか忍者っぽい(笑)。だから私も一応主役ではあるのですが、常に2番手、3番手のような気分で撮影現場にいます。真っすぐな兄を支える信繁でありたいと思います。

-信繁と堺さんは似ていますか。

 テレビゲームの影響で、筋肉ムキムキの裸によろいを着てやりをぶんぶん振り回すという真田幸村像が世間的には印象が強い(笑)。今回の信繁はそのイメージよりは僕自身に近いと思います。でも信繁の面白さは49年の人生のうち47年間は裏方だったのに、最後の最後で恐ろしいばかりの武者になるというその変わり目。普通のサラリーマンのような人間が何故「日の本一のつわもの」と言われるまでになったのか、その秘密を三谷さんは1年懸けて描くのだと思います。

-堺さんご自身は裏方タイプですか。

 いや、僕は実務の能力が全くありません。でも三谷作品に登場する裏方さんや、日の当たらないところにいる人たちは、いつも生き生きとしているので、そんな三谷さんが描く戦国の実務方としての信繁をすごく楽しみにしています。

-女性陣も個性的な人がそろっていますね。

 草笛光子さんが演じる祖母は本当にりりしくて、歴戦をくぐり抜けてきた女性。高畑淳子さんが演じる母は、都(みやこ)の出身で真田家の暮らしになじめない悲しさを持っていますが、生き生きとした女性像を作っていらっしゃいます。姉役の木村佳乃さんが持つ天性の明るさが、裏切りとか血なまぐさいものになりがちな物語に光や華を注いでくださっていますね。信繁の生涯のパートナーとなる、きりを演じる長澤まさみさんは計り知れないようなスケールの大きな女優さん。物語をかき乱す役ですが、魅力的で素晴らしい演技をされます。黒木華さんは時代劇が似合うし、手堅いお芝居と技術はすごいですね。

-1年懸けて同じ人物を演じることに対して役者としての意気込みを。

 第1話の撮影で、未来を予感するシーンとして、死ぬ前の、よろいを着た信繁を演じましたが、それと最終話を比べて「全然違うね」というふうになりたいんです。1年懸けて作る顔って全然違ってくると思うので、その違いをむしろ楽しみたいです。

-どんなふうに面白くしていこうと思っていますか。

 「生き生きと」というのはひとつのキーワードになります。つい先回りして史実で考えてしまうと、教科書をなぞるような展開になりがちです。そうすると勝者は最初から勝者のような顔をして、敗者は最初から敗者のような顔をして演技をしがちになります。「一寸先は闇で、何があるか分からない」という闇を、三谷さんはしっかり描かれると思うので、分かったふりをせず生き生きと演じようと思っています。

-三谷脚本への出演は「新選組!」以来2回目ですね。

 その間に舞台(2007年上演の「恐れを知らぬ川上音二郎一座」)をやっています。不思議なことにみんな個人名ではなくグループ名がタイトル。「真田丸」も砦の名前でもあるし、船に見立てた家族の話でもあります。「新選組!」は多摩の一道場の若者たちが思いも寄らなかった所へ行くところに面白さがありましたが、三谷脚本は、個人を越えたコントロールできない大きなうねりの中で、予想もしない方向に物事が動いていくところが面白いんです。

-よろいの着け具合はいかがでしたか。

 重いんです。実は戦国時代も戦の直前までよろいは着ていなかったらしくて、なんとかその史実を持ち込めないかと思っています(笑)。でも美術部の人が目をきらきらさせながら信繁用によろいを新調してくださっていて、大喜びで「良いのができました」って言うのを見ていると「重い」とは言い出せませんでした(笑)。

-最後の大坂城の時にはゲームの真田幸村のようにムキムキの体によろいというのは?

 いやあ、無理です。ムキムキよりは、サラリーマン(のような普通の人)が突進していく方が悲しさが出るんじゃないかな。だから今回は筋トレをせずに撮影に臨んでいます(笑)。

-信繁は徳川史観から見ると敗者ですが、堺さんは信繁を敗者だと思いますか。

 結果的には敗者ですよね。ただ面白いのは、「新選組!」は徳川の終わりの敗者を描いている。今回は豊臣の終わりの敗者を描いているんです。三谷さんは映画『清須会議』で織田の終わりを描いている。三つの終わりを描いているというのが、すごく面白いと思っています。特に信繁が生きた時代は徳川という、全国が一つの価値観に染められる前の最後の時代。信繁の死というのはその多様性の死のような気がします。右肩上がりの成長を続ける大名だけじゃなくて、何かの終わり、一つの価値観の終わりを丁寧に描く大河があってもいいと思います。ごまかさずに、負けた方を描くことが必要な時代になっているのではないかと、個人的に思っています。

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