『僕等がいた』二部作を手がけた三木孝浩監督

累計発行部数が1200万部を突破した小畑友紀の同名コミックを生田斗真、吉高由里子共演で映画化する『僕等がいた』の前篇が現在公開されており、21日(土)からは後篇が公開される。人気原作を二部作連続公開で映画化する本プロジェクトはどのように進められたのか?メガホンをとった三木孝浩監督に話を聞いた。

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『僕等がいた』は、北海道と東京を舞台に、誰からも愛される人気者でありながら心に暗い影を持つ青年・矢野元晴(生田)と、矢野の影を受け入れ彼を一途に想い続ける高橋七美(吉高)の7年にわたるラブ・ストーリーだ。

『ソラニン』では浅野いにお氏の人気コミックを、『管制塔』ではGalileo Galilei(ガリレオガリレイ)の楽曲を基に新作を撮りあげた三木監督だが、本作も熱狂的なファンが多いコミックの映画化だ。「原作もので間違ってはいけないと思うのは“作者の先生のキャラクターに対するアプローチ”。そこさえ間違えなければ原作の世界観は損なわれないと思います」という三木監督は、原作に込められた“情緒感”をスクリーンに表現しようと工夫を凝らしたという。「風の動きだったり、髪が少し揺れたり、カメラをほんの少しだけ動かしたりしながら、情緒を映画の“動き”に変換して表現しました」。

本作で矢野と七美はお互いを想いながら、何度もすれ違い、傷つけあう。時にふたりは目の前に“正しいこと”があるにも関わらず、それとは異なる行動をしてしまう。その“説明のつかない感情、行動”こそが本作のファンを魅了してきた。しかし、具体的に脚本を書き、俳優の演出をして、スタッフにシーンの説明をする監督にとって、“何だかよくわからない”感情や行動を描くことは容易ではない。「恋愛ってだいたい理不尽ですからね。明確な答えはないし。でも、理屈ではないからこそ腑に落ちる部分もあると思うんです。だから俳優さんにも事前にあまり説明はしないで、その場でそのセリフを聞いて、感情がどう動くかだけを大事にしてもらったんです。だから現場では、キャラクターのリアクションが“生の感情”かどうかだけを見ていた気がします」。

ちなみに本作は7年に渡る物語だが、前篇の語り手は大人の七美で、矢野と初めて会った高校生の彼女は、“過去の記憶”だ。「前後篇でやるとなった時から狙っていたことなんですけど、前篇を観た観客のみなさんは、後篇を観るときには少し時間が経っているので前篇の内容が“記憶”になっているんです。この映画は記憶や思い出に関する物語なので、そこが体感として追体験できる。この映画は、“過去の記憶”が現在の自分にどう作用しているのかを描いているので、前篇の記憶が自分の中である程度、鮮明なうちに後篇を観てもらいたいですね」。

『僕等がいた 前篇』
公開中
『僕等がいた 後篇』
4月21日(土)公開

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