紙をローラーで取り込んで読み取るシートフィード型スキャナの好調が続いている。追い風になっているのは、紙の書籍をユーザー自らがスキャンして電子化する「自炊」ブームだ。他社に先駆けて、シートフィード型スキャナ「ScanSnap」シリーズを投入し、販売に力を入れてきたPFUは、市場のけん引役となった。「ScanSnap」の躍進の道のりと今後の展望を、松本秀樹・ECM営業統括部統括部長に聞いた。(取材・文/田沢理恵)

◎プロフィール

(まつもと ひでき)1962年生まれ。東京都出身。84年、パナファコム(現PFU)入社。ビジネスPCの販売推進や新規事業の立ち上げに携わり、06年からイメージビジネスグループでスキャナの国内営業を担当。10年10月から現職。

●ワイヤレス連携で利便性を強化

書類の電子化でスキャンのニーズは拡大する

Q. シートフィード型スキャナが好調に推移している。市場拡大の要因は何か。

A. 自炊ブームが起爆材になって拡大したことは間違いない。書籍を自ら電子化して閲覧したいという人のニーズが、シートフィード型スキャナの拡大を後押しした。「ScanSnap」は、ある著名人が活用例をブログで書いてくれたことがきっかけになって、口コミで伝わったり、メディアで記事化されたりする機会が増えた。これが大きく寄与している。店頭販売を始めた02年度から10年度までの年平均伸び率は44.7%で推移している。

Q. 自炊ブームでブレイクするまで、どのような取り組みをしてきたのか。発売当時のことを聞きたい。

A. PFUは、もともとオフィスコンピュータやサーバー中心のビジネスをしてきた会社だが、01年、事業拡大を図るためにオフィスユースやコンシューマをターゲットにした製品の発売に乗り出した。直販サイトで試験的に「ScanSnap」初代機を発売した。結果は、想像以上の売れ行きだったが、それでもユーザーは新しいデジタル機器が好きなマニア層が中心だった。店頭販売を始めたのは02年の秋。当時、スキャナはフラットベッド型が主流で、シートフィード型は店頭になく、よさがなかなか伝えられないというジレンマを抱えて苦労した。

Q. 店頭販売が軌道に乗ったのはいつ頃だったのか。

A. 本格的に店頭で販売を拡大したのは07年以降。それまでは単一モデルだったのだが、07年にエントリーモデルの「S300」を発売し、ラインアップを拡充した。そのとき、タレントのルー大柴さんを起用してインパクトのあるPRを行い、アピールした。こうした取り組みが功を奏して、店頭での販売が伸び始めた。

Q. 今後の展望は?

A. 書類の電子化が進んでいくことで、紙の状態のままで書類を保管する機会は減っていく。逆に、スキャンのニーズは確実に増えていく。シートフィード型のスキャナは、将来はインクジェットプリンタとともに家庭に置かれるようになるとみている。

Q. では、「ScanSnap」はどう進化していくのか。

A. ワイヤレスをさらに進化させていくことがキーワードだ。昨年発売したモバイルタイプの「1100」以降、クラウドサービスやiPad/iPhoneとの連携で、スキャンしたデータがどこでも見られる利便性を打ち出している。今年10月21日に発売した「S1500」の新製品は、iTunesを介さずに、PCからWi-FiでiPad/iPhoneにデータが転送できるようにした。今後は、「ScanSnap」自体がWi-Fiに対応し、PCを介さずに端末でデータが見られるようにしていきたい。

※本記事は、ITビジネス情報紙「週刊BCN」2011年10月31日付 vol.1405より転載したものです。内容は取材時の情報に基づいており、最新の情報とは異なる可能性があります。 >> 週刊BCNとは