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 火星に一人取り残された男のサバイバルの様子をダイナミックに描いた『オデッセイ』が公開された。

 火星での探査中に、激しい嵐に巻き込まれ、行方不明となったマーク・ワトニー(マット・デイモン)。他の乗務員は彼が死んだものと思い火星を去るが、どっこいワトニーは生きていた! 彼は科学者としての知恵を生かし、創意工夫を凝らしながら、次の探査船が到着する4年後まで生き延びることを決意する。

 主人公のワトニーは、絶望的とも思える状況下にありながら、決して諦めずに生き抜く方法を模索する。『インターステラー』(14)に続いて異星に取り残された男を演じたデーモンの好演もあり、まずはこのワトニーの明るくポジティブなキャラクターに魅了される。

 そして、ワトニーのサバイバル劇に、後半は仲間による救出劇を加え、デーモンの一人芝居とNASAや探査船乗組員たちのグループ劇を並立させることで、『ゼロ・グラビティ』(13)と『アポロ13』(95)を合わせたような面白さを生み出すことにも成功している。

 リドリー・スコット監督は、『エイリアン』(79)『ブレードランナー』(82)『ブラック・レイン』(89)『1492コロンブス』(92)『白い嵐』(96)などで、図らずも異郷に紛れ込んでしまった主人公を好んで描いてきたが、本作もその系譜に連なるだろう。また『エイリアン』『テルマ&ルイーズ』(91)『G.I.ジェーン』(97)などに登場した“タフな女性キャラ”も、本作の探査船の船長役のジェシカ・チャスティンに引き継がれている。

 ほかにも、ハンガリーのスタジオに巨大なセットを組んで撮影された火星の風景、「スターマン」(デビッド・ボウイ)「恋のサバイバル」(グロリア・ゲイナー)など、思わずニヤリとさせられる挿入歌の選曲の妙、脇役ジェフ・ダニエルズ、ショーン・ビーン、マイケル・ペーニャらの活躍なども見どころだ。(田中雄二)