機械や建物の設計、製図をコンピューターで行う際に必要なCADソフト。製造業や土木・建設、建築業を中心に浸透している。最近は三次元の立体物を出力する3Dプリンタが普及したことによって、一般のユーザーも趣味の範囲で活用するようになった。このCADソフト市場を独走しているのが「AutoCAD」シリーズを展開するオートデスクだ。

全国の主要家電量販店、パソコン販売店、ネットショップから収集した実売データ「BCNランキング」にもとづき、1年間の総販売数量が最も多かった企業を部門ごとに表彰する「BCN AWARD」。2015年の年間実売データにもとづいた「BCN AWARD 2016」でCADソフト部門を制したのはオートデスク。5年連続10回目の受賞となった。

CADソフト部門は、「BCN AWARD 2005」から「BCN AWARD 2011」の7年間、表彰がなかった。そのため、オートデスクの連続受賞記録こそ中断したが、「BCNランキング」では他社を寄せ付けず13年間独走し続けた。

●時代の流れに合わせて、ユーザーのニーズにフレキシブルに対応

オートデスクは2014年から使用期間を選択して利用できる期間ライセンスの提供を開始した。アプリケーションはダウンロードで入手でき、契約期間は1か月、3か月、1年に加え、2015年にはより長期間での利用ができるよう「2年」、「3年」も追加された。

これまでの買い取り型の永久ライセンスと比べ、設計プロジェクトの規模や期間に合わせて使用期間やライセンス数を選択できる。使いたい期間、使いたい数だけ料金を支払う形式だ。永久ライセンスと比べて初期費用をぐっと抑えられる点も魅力だ。

ユーザーからも、急なニーズに対応できる、必要な期間だけ使える、大幅に費用を抑える事ができた、と手軽さが好評だ。また、新たにパッケージを買い足すことなく常に最新バージョンを利用できる点も好評だ。

●2016年は期間ライセンスに完全移行 2月から特典も

この好評の期間ライセンスを2016年はさらに強化、完全移行していく。「AutoCAD」ならびに「AutoCAD LT」については今年2月1日から期間ライセンスのみの販売に一本化した。また、特に新規購入者の多い「AutoCAD LT」の期間ライセンスにはユーザーの満足度を高める特典として、無償電話サポートを標準で提供するほか、スマートフォンやタブレットでも使えるDWG閲覧・編集アプリケーション「AutoCAD 360」の高機能版、「AutoCAD 360 Pro」(有償)を追加費用なしで提供する。

期間ライセンスのメリットとして画期的なのが、シングルユーザーと呼ばれる指名ユーザー方式だ。これまで「AutoCAD LT」はインストールしているPCに利用範囲が固定されており、海外出張などへ持ち出すことができなかった。しかし指名ユーザーライセンスは、ライセンスが使う人に紐づくので、その人がどこで、どのPCで使ってもOK。本社や地方の事務所など複数のPCにインストールしても、指定されたユーザーが使う限り使用許諾を破ることはない。その代わり、一つの指名ユーザーライセンスを複数の人が使い回すことはできない。

この問題を解決するのがマルチユーザーと呼ばれるネットワークライセンスだ。一般的にはコンカレントライセンスや同時利用ライセンスとも呼ばれる。シングルユーザーライセンスではCADを利用するスタッフの人数分のライセンスが必要だが、マルチユーザーライセンスはライセンスサーバーで合計使用ライセンスを管理するため、複数の利用者でライセンスを共有できる。人数分ではなく、同時利用するライセンス数分だけ用意すればいいので、コストをぐっと抑えることができる。

また「AutoCAD 360」は、作図、製図アプリケーション。タブレットなどで図面の表示のほか、編集、作成ができるので、クライアントとの打ち合わせの際に便利だ。「AutoCAD 360」は無料でインストールできるが、「AutoCAD LT」の期間ライセンスのユーザーであれば6000円相当の有料オプション機能がApp内課金なしで利用できるので外出先でも使い込みたい人にはお得だ。

いまや、設計やものづくりの現場は、スピードとグローバル化が求められている。ビジネスを成功させるには最新のテクノロジーを場所やデバイスに依存されずに利用できる環境が必要だ。同時に設計・開発工程のコストを削減し、収益率を考える必要もある。

オートデスクはこうしたユーザーが身を置く業界の変化、ニーズに柔軟に対応。ユーザーに寄り添う姿勢が、ユーザーが支持した証であり、「BCN AWARD 2016」受賞につながっている。(BCN・山下彰子)

*「BCNランキング」は、全国の主要家電量販店・ネットショップからパソコン本体、デジタル家電などの実売データを毎日収集・集計している実売データベースで、日本の店頭市場の約4割をカバーしています。