イラスト:上田 耀子

妻が自分以外の男性と関係を持っているかもしれない。こんな疑惑は、もし本当ならつらいしそのままにしておけないと思いますよね。

ですが、ある男性は妻が不倫している可能性を見ないふりをして過ごしています。

「今のほうがいい」と語る夫には、どんな思惑があるのでしょうか。

自分に嘘をついて男性と会っている妻

ある男性(36歳)は、看護師として総合病院で働いています。勤務はシフト制で夜勤もあり、忙しい毎日ですがやる気を持って勤めていました。

33歳の妻と小学生の娘がいて、「家族仲は良いほう」だと男性は思っています。

経理の仕事をしている妻も正社員として別の会社で働いていますが、不規則な勤めの夫の分も家事や育児を引き受けて、家のことはほとんどやってくれるそうです。

男性が妻の異変に気がついたのは半年前。

「職場のみんなで飲み会をするの」と言って出かけた妻を、知人が「お前の奥さん、○○で男と腕を組んで歩いていたぞ」と報告されたのがきっかけでした。

最初は「人違いだろう」と思っていた男性でしたが、それから注意して妻の様子を見ていると、以前より「今日は残業だから」と帰宅が遅くなる日が多くなったことやスマホを触る時間が増えたなど、“変化”は確かにあるのでした。

決定的だったのは、

「夜中にキッチンで誰かと電話していたんですよ。

寝室だと俺も娘も寝ているからキッチンに行ったんだろうけど、ちょっと聞いてみたら『早く会いたい』とか『寂しい』とか言っていて。

さーっと血の気が引く音がして、めちゃくちゃショックでしたね」

その夜から、男性は妻から「仕事で遅くなる」と言われれば不倫相手と会うことを疑い、笑顔でスマホを見ているときは不倫相手とやり取りをしているのかと思うようになりました。

不倫を許す理由

「不倫をやめさせないの?」

とこの男性に訊いたら、

「いや、不倫は別に構わないんです」

とはっきりした声が返ってきました。

驚いて理由を尋ねると、

「確かに俺以外の男と仲良くしているのはショックですけど、家のことや娘のことはしっかりやってくれているんですよ。

俺はこんな勤務だから土日も一緒にいないことが多いし、娘の学校のことも妻に任せるしかない。

それについて妻から文句を言われたことはないですけど、申し訳ないなと思うし、感謝もしているんです」

そう淡々と答える男性はいたって冷静な表情で、無理をしている様子はありませんでした。

「家のことをやってくれているから、不倫していても構わないと?」

こう尋ねると、

「そうですね。

これで家事も娘もほったらかしなら許せませんけど、そうじゃないから。

俺が家のことをできない分、妻に頼るしかないし、ちゃんとやってくれるってことは離婚する気はないんですよね?

それだったら、俺が我慢すればいいかなって」

男性は、静かな口調で答えました。

家庭より不倫を優先しているわけではないから許せる。

それは、本当に妻の不貞を放置して良い理由になるのでしょうか。