腸内フローラは性格形成にも影響を及ぼす

「臆病な性格のマウス」と「活発な性格のマウス」の腸内フローラを入れ替えた結果、マウスの性格まで入れ替わってしまったという実験データがあります。

「性格は親の遺伝によるものが大きい」という定説が、腸内フローラの研究によって覆されてしまったわけです。

また、コミュニケーション能力の低いマウスの腸内フローラには「4EPS」という物質が含まれていて、それを取り除くとコミュニケーション能力が上がった、という研究データもあります。

さらに、脳の働きに一定の影響を与えるとわかっている腸内細菌を、うつ病の患者の腸内フローラに加えることで、うつ病が改善できたというデータもあります。もはや、心の病も脳機能だけが原因だとはいえなくなったのです。

22世紀の医学では、腸内フローラを操作することで、赤ちゃんの性格形成や、心の病までも思うように改善できるようになっているかもしれません。

ヒトの腸内フローラのバランスが崩れ始めるのはいつから?

赤ちゃんは、ママのお腹の中では無菌状態です。だから、生まれたての赤ちゃんは、ママのお腹から出てくると同時にさまざまな菌に覆われ、それらの菌が体内に入ってきます。

そして、免疫や抗体を一切持っていない赤ちゃんは、母乳によってママの身体の免疫や抗体を取り込みます。本来抗体は、体内に入ってきた異物を攻撃し、やっつける働きが広く知られていますが、実は、ヒトの身体が生きていくうえで必要な物質を選別して体内に引き入れる働きもあるのです。

その抗体によって、腸内フローラに住み着くことの許される優れた菌が選別され、腸内に住み着くことが許されます。

古来より、ヒトは細菌と共存してきました。腸内フローラも同じです。身体を健康に保ってくれる、腸内フローラのための、より優秀な菌(花の種)を選別してきました。

無菌状態で生まれた赤ちゃんの腸内フローラは、生まれて23日の間にビフィズス菌の花で覆われます。でも、その花畑の花はまだ1種類、まだ腸内フローラは出来上がっていません。

その後、母乳やママの口移し、飲み物から、腸内の花の種は少しずつ増えていき、離乳食が始まって食事をとれるようになるまでには、赤ちゃんの腸にも、ヒトの完ぺきな腸内フローラがほぼ出来上がります。