【映画コラム】上質な舞台劇を見ているような気分になる『スティーブ・ジョブズ』

2016.2.13 16:40配信
(C) Universal Pictures (C) Francois Duhamel

 ダニー・ボイル監督が、アップルの共同創業者である故スティーブ・ジョブズの半生に迫った伝記映画『スティーブ・ジョブズ』が公開された。

 本作の脚本は、Facebookを創設したマーク・ザッカーバーグらを描いた『ソーシャル・ネットワーク』(10)のアーロン・ソーキンが担当しているが、ユニークな点は、ただ時系列を追う伝記物語にはせず、1984年のMacintosh、88年のNeXT Cube、98年のiMacという、伝説となったジョブズの三つのプレゼンテーションの舞台裏のみを描くという手法を取っているところ。

 これは、三幕構成(設定、対立、解決)と呼ばれる脚本の基本構成に、三つの出来事をうまく取り入れているのだが、実際のジョブズのスピーチ原稿もこの三幕構成を基本に書かれていたという。つまり本作は、ストーリーの内部に別の三幕構成を内包した“入れ子構造”で作られているのだ。

 その三つの違った時代の中で、ジョブズと娘、あるいは周囲の人物たちとの関わり方、立場や関係性が変化していくさまが興味深く描かれる。同一人物がジョブズにとってある時は味方になり、またある時は敵にもなるという具合。

 そして、ジョブズの周囲に入れ代わり立ち代わり現れる彼ら、彼女らの動静や膨大なせりふのやりとりを見ていると、会話を主体とした上質な舞台劇を見ているような気分になってくる。このあたりがボイル演出の真骨頂とも言える。

 また、周囲の人物との絡みから、天才か変人か、カリスマか悪魔か、残忍なのに魅力的といった、ジョブズの二面性や複雑な人物像が浮き彫りになってくるところも面白い。

 ジョブズを演じたマイケル・ファスベンダーをはじめ、部下役のケイト・ウィンスレット、同僚や友人役のジェフ・ダニエルズ、マイケル・スタールバーグ、セス・ローゲンなど、俳優たちも見事な演技で名演出と名脚本に応えている。(田中雄二)

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