メンバーひとりひとりの涙がそれぞれのいまの気持ちを代弁

今回のドキュメンタリーでは、そんな齋藤の“素”の顔とともに、与田が地元の福岡に戻り、実家で飼っているさまざまな動物たちと触れ合う姿も新鮮だ。

『いつのまにか、ここにいる Documentary of 乃木坂46』7月5日公開 ©2019「DOCUMENTARY of 乃木坂46」製作委員会

与田 動物たちとワイワイしているところは、監督から特に何も言われず、本当に自由にやらせていただいたんですけど、エンドロールで使われているショットではヤギの“ごんぞう”がどアップで迫ってきて。

あそこは、完成した作品を観たときに、画面を思わずスマホで撮っちゃいました(笑)。

地元で楽しそうに、のびのびと過ごす彼女が、おばあちゃんが綺麗に保存してくれていた自分のグラビアのファイルを見ながら涙するシーンも印象的だ。

与田 ファイルを見ながらおばあちゃんと話しているときに、おばあちゃんやおじいちゃんは誰よりも私を見てくれているんだなと思ったら、グッときちゃったんです。

優しさや愛を感じるとグッとくるじゃないですか? でも、泣いていたらおばあちゃんが絶対に心配するからずっとこらえていたんですけど、涙が止まらなくて。ただ、誰からも突っ込まれなかったんですよ(笑)。

私もたぶんバレてないと思っているんですけど、あのとき、どうして涙が止まらなかったんですかね?

おばあちゃんの声を聞きながら話していたら涙が自然にこぼれたんですけど、やっぱり嬉しかったんです。

この映画ではメンバーひとりひとりの涙がそれぞれのいまの気持ちを代弁しているのかもしれない。

齋藤 与田っちょは四六時中泣いてるよね。

与田 そうなんです(笑)。

齋藤 何が起こっても泣いてる(笑)。

与田 私も大園桃子(3期生)と初めてセンターを務めさせてもらった「逃げ水」(17年/18枚目のシングル)のころは泣かないようにしようと思って頑張っていたんだけど……。

齋藤 ああ、確かに「逃げ水」のときは強いなって思った。

与田 あのときはめっちゃ気を張って、絶対に泣かない、泣かないと思いながら頑張っていたんですけど、そのうちに泣きたいときは泣こうという考え方に変わって。

そしたらそれ以降、何があっても、ずっと泣くようになっちゃいました(笑)。

齋藤の場合は、西野が「卒業」の報告をしたときでさえ、驚きや悲しみ、複雑な表情を浮かべるメンバーの中で、ただひとり、冷静にその現実を受けとめるような、どこか凛とした佇まいをしていた。

それだけに、レコード大賞を連覇した直後の、抱きついてきた大園と一緒に涙を流すシーンがひと際目に焼きつく。

齋藤 あのときは、なんかグッときましたね。私もどちらかと言うと、昔は与田っちょみたいに何があっても泣いていて。

涙しか感情の表現を知らなかったと言うか……別に与田っちょがそうだと言っているわけではないですけど(笑)、涙を流すことしかできなかったんですけど、だんだん自制できるようになってきたんです。

でも、あのときは、レコード大賞を受賞した嬉しさもすごくあったし、メンバーやスタッフさんたちが喜んでいる姿にも感動して。

そんな中で、大園が私に抱きついてきて、あるひと言を言ったんですけど、そのときの私もどこか同じ気持ちだったし、横で見ていた振付のSeishiroさんのひと言にもグッときて。そういったものがすべて一度に入ってきたので、自然に涙がボロボロって溢れ出したんです。

彼女たちがこんなにも自分の想いを赤裸々にさらけ出すことができたのは、メガホンをとった気鋭の映像クリエイター・岩下力の手腕によるところが大きい。

齋藤 岩下さんは本当に長い期間、私たちのどの現場にも来てくださって。

今回の映画以外にも、海外に向けたちょっとした短めのドキュメンタリー映像を作ってくださったり、かなり前からお世話になっている方だったし、いつも自然に現場にいてくださるので、カメラが回っているから気を張らなくちゃみたいな空気がまったくないんですよね。

それに、岩下さんはインタビューのときに、けっこう自分の話をしてくださるので、それに乗せられるように言葉が出てきたり、私自身、岩下さんと近い考えを持っているなと感じることが何度もあって。

もちろん、岩下さんは“たぶんこういう風に思っているんだろうな?”って予測しながら聞いてくれているとは思うんですけど、別にそれを押しつけてくるわけでもなかったので、こっちも自然に言葉が出てくる。

それこそ、乃木坂に興味があるのかないのか分からない不思議な距離感だったから(笑)、いつもはどこまで話していいんだろう? こういう言葉に変えた方がいいのかな?ってインタビューのときは頭を悩ますんですけど、今回はいちいちそんなことを考えることもなく自然に会話ができたんです。

それはたぶん、監督が岩下さんだったからだと思います。

与田 私はインタビューで喋るのがあまり得意ではなくて。

言いたいことはあるんですけど、それをうまく言葉にできなかったり、もうちょっといい伝え方があるんじゃないか?って悩んだり、けっこう頭の中がグチャグチャになっちゃうタイプなんですよね(笑)。

でも、岩下さんはそんな私に時間の流れを合わせてくれて。言葉がちゃんと出てくるまで待ってくださったり、気持ちを汲み取ってくださったので、私も本音で話しやすかったですし、リラックスして撮っていただくことができました。

前作もそうだったが、今回のドキュメンタリーでも、表側の華やかさとは違う、乃木坂46のメンバーがひとりひとり奮闘するバックグラウンドが紹介され、アイドルが改めて体力的にも精神的にも大変な仕事なんだなということに気づかされる。

彼女たちがそこに立ち続ける、立ち続けられる原動力は何なのだろう?

彼女たちがそこに立ち続ける原動力とは?

齋藤 メンバーといるのが楽しいとか、居心地がいいとか、スタッフさんが優しいとか、周りの人のおかげでやれていると思う感謝の気持ちはあるけれど、自分の中では乃木坂にいさせてもらっているという意識の方が強いから、それを励みに頑張っています、というより、「ありがとうございます。頑張らせていただきます」という気持ちなんです。

与田 私には将来の夢とかやりたいと思うものがずっとなかったんです。乃木坂に入ったきっかけも、友だち伝いに知ったオーディションをその友だちと一緒に受けたら受かってしまったというふわっとしたものだったんですけど、3期生として加入したときに、やるならちゃんとやろうと自分で決めたんです。

でも、自分が思っていた以上に、アイドルとして活動するのってこんなに大変なんだ!?って現実を目の当たりにすることが多くて。

その度に先輩や同期、スタッフさんやファンの方々に助けられているなと感じることが多いし、いま活動できているのはその人たちのおかげだなと思うんですよね。

でも、助けてもらってばかりなので、私にできることで何か返していかなきゃという気持ちもあるんです。

それが原動力なのかどうかは分からないけれど、その気持ちと乃木坂をもっと好きになりたいという想いがあるから、頑張れているような気がします。

ハードな活動を続けていると、時には潰れてしまいそうになるときもあると思うが、そんなときはどう対処しているのだろうか?

与田 朝ごはんをいっぱい食べて頑張っています。

私は田舎で木登りをしたり、野生児のように育ったので、体力はもともとなくはないんですけど、やっぱり大事だと思うので、時間を見つけて筋トレなどをユルっとやっています。

でも、乃木坂の活動を楽しんだり、感謝の気持ちを忘れないようにしたり……考え方が前向きになりました。

齋藤 う~ん、何だろうな~? もともと壊れるようなタイプじゃないけれど、強いわけでもない(笑)。

ひとりの時間を作ることは一応心がけてはいるものの、それによって壊れないということでもないですから、自分ではよく分からないですね。

ところで、ふたりは自身の“卒業”についてはどう考えているのだろう?