最初はギターが全然弾けなかった、という当たり前の事実も、本人の口から語られると、これまでギターに何度も挫折している自分のような人間は「ああ、みんなそうだったんだ!」とジンワリ感動する。彼らは自らの感覚にじつに忠実に、ロックンロールの世界へと飛び込んでいく。そこでピカピカに光る「!」を発見する瞬間は、読んでいるこちらまでワクワクドキドキする。そして彼らと同じように、かつて自分が「!」を発見したときのことを思い出す。

読み進めるうちに、15人それぞれのエピソードがひとつの大きなストーリーを描き始める。例えば冒頭で、若い成田大致や平田ぱんだがザ・ブルーハーツやザ・ハイロウズに対しての愛を語ったあと、張本人である真島昌利と甲本ヒロトが登場するなど、本自体の構成もそう読ませるものになっている。

ロックンロールと出会った衝撃をエネルギーに、自らのロックンロールを鳴らし、それがまた別の誰かに刺さっていく。そんな循環するロックンロールの輪がずっと昔から存在していたことがわかる。そしてその輪の中に読み手である自分もいるのだということを実感することができる。甲本ヒロトが自らの章の最後に語った「反射する輝き」の話は、そのことを彼にしかできないすばらしい言葉のチョイスで端的に表現している。

生まれた環境や世代の違いはあれど、共通するのは、ロックンロールの前ではみんなあまりに無防備であること。とにかく全員、本当に楽しそうに語っているのだ。ページを開くと15人15通りの、そしてそこから繋がるたくさんのロックンロールが、頭の中で鳴り出す。『ロックンロールが降ってきた日』には、音の鳴らない本というかたちだからこそ鳴らすことのできた、最高のロックンロールが詰まっている。

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