美術監督・種田陽平が語る『ヘイトフル・エイト』

2016.3.1 12:25配信
『ヘイトフル・エイト』(C)MMXV Visiona Romantica. Inc. All rights reserved.

クエンティン・タランティーノ監督の最新作『ヘイトフル・エイト』が公開されている。本作は雪に閉ざされた密室で起こる8人のキャラクターの壮絶な駆け引きを描いた作品だが、『キル・ビルVol.1』以来、久々に種田陽平がプロダクション・デザインを手がけている。密室に8人の俳優が詰め込まれ、デジタルよりも遥かに大きな70ミリカメラを使った撮影が行われたが、監督のリクエストは「セットは少し小さくしてくれ」だったいう。その真意は? 種田に話を聞いた。

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日本だけでなく世界で活躍する種田は、これまでに様々な監督とタッグを組んでおり、タランティーノ作品は『キル・ビル』以来、約12年ぶりになるが「クエンティンの場合は、オーセンティックではあるんだけど、一般的な映画以上に、美術と俳優、カメラとの絡みが執拗なまでに細かい」のが特徴だという。「たとえば、(映画の前半に登場する)駅馬車のステップの“しなり具合”だったり、ドアノブの“まわり具合”だったり、俳優が小道具を使い倒すので、クエンティンが自分で持ってみて、座ってみて、芝居がしにくいと変更が入ったりします。それに彼はとにかくクローズアップが好きなので、ちょっとした違和感があるとリクエストがあるし、予想外の注文が来たりするんです」

現在、多くの映画監督は撮影現場でカメラの隣ではなく、撮影されたものと同じ映像が見られるモニターの前にいることが多いが、タランティーノ監督は現在もカメラの隣で俳優の演技を見守る。さらに撮影現場には、ウルトラ・パナビジョン70という巨大で、シネマスコープよりも横長(1対2.76)の映像を描き出せるカメラが導入された。「最初に『70ミリのためにセットを少し大きくしようか?』と提案したら、クエンティンから『役者のためにセットは少し小さくしてくれ』と言われたので、70ミリのために特別、大げさなことをしたということはないんです。クエンティンから言われたのは、“インテリアが役者を包み込んでいるようなセット”。映像から考えると、もう少し広くしたほうが70ミリには映えるかなってなるんですけど、完成した映画はカットごとにムードが出ている。それはコンピュータとかCGを通して出てくる感覚とは違うんですよね」

さらに横に長いフレームがスクリーンいっぱいに広がることで、“最後までひとつ空間に見えない”ほどの多様性のあるカットの積み重ねが可能になっているという。「この画面比率は、室内を撮るにはそんなに適していないんですよね。というのも、普通に撮っただけでも、広く見えてしまうんです。結果として狭く作ったセットがちゃんと広く見えるし、同じセットの中でも見るたびに違う場所に目が行くんですよ。フォーカスとライティングで、それまで気づかなかったものが見えたり、最後まで飽きることなくひとつのセットにつきあってもらえる。この映画はできるだけ大きな画面で、シネコンでも大きなスクリーンで上映されている間に観てほしいですね」

『ヘイトフル・エイト』
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