――災害が起こった際、日頃からやっておくと役立つことはありますか?

熊谷:普段からキャリーバッグ等に入ることを嫌がらないように慣らしておくことが重要です。

動物病院に行くことにも慣れない猫ちゃんの場合は、ストレスにならない程度に、キャリーバッグに入れるまでの時間を測ってみるなど、定期的に避難訓練を行うのも良いかもしれません。

キャリーには普段使っている毛布やおもちゃなど、猫ちゃんの匂いがついているものを入れると、キャリーを嫌なものだと思わなくなります。

また、大前提として、日頃の防災対策が重要です。猫ちゃんを飼育しているかどうかにかかわらず、家具を固定するなどの対策を行う必要がありますが、猫ちゃんが普段いる場所にも配慮することで、より安全を確保できます。

万が一の逸走や迷子対策に、首輪や迷子札、マイクロチップの装着を検討しましょう。

首輪には電話番号を記載

ガムテープはケージやキャリーが壊れたときの補強に使える

――災害時、人間ですと軍手や新聞紙などが役立つアイテムとして有名です。どこの家庭でもあるようなもので、災害時に猫ちゃんに役立つアイテムはありますか?

熊谷:手軽に入手できるものとしては、ウェットティッシュ(できればペット用)、ケージやキャリーなどが壊れた際に補強するのに有効なガムテープ、寒い時期に猫ちゃんが暖を取れるカイロなどでしょうか。

あと、猫を飼われている方であればご存知の方も多いかもしれませんが、猫ちゃんを安全に移動させるにあたり洗濯ネットも有効です。

――実際に災害が起こった際、猫ちゃんのためにどんな行動をとるべきでしょうか。

熊谷:避難所等への避難が必ずしも必要のないケースの災害が多くを占めることを考えると、まずは落ち着かせ、脱走やケガのないように配慮することが大切です。

また、これも大前提ではありますが、まずは飼い主さん自身の身の安全を確保してください。

ペットとの同行避難は環境省が「必要な措置」とガイドラインに定めている

――災害時、よくニュースでは体育館などの避難所に避難している方を見かけます。避難所にはペットを持ち込めるのでしょうか?

熊谷:災害時の同行避難は環境省が「必要な措置」としてガイドライン内に定めています。動物愛護の観点のみならず、放浪動物による人への危害防止や生活環境保全の観点で推奨されています。

事前に避難所の場所やルートを自身で確認することは必須ですが、避難所におけるペットの取り扱いは自治体によって様々であるため、避難所に猫ちゃんを連れていく際の注意事項を自治体に確認しておくことも重要です。

屋内飼育が可能なのか、ペット専用の係留所があるのかなども確認しましょう。

東日本大震災以降、避難所や仮設住宅もペットの有り無しで生活区域を分けるところが出てきているので、自身の住む地域がどのような対応をするのかなど情報収集をしっかり行ってください。

ペットを飼っている人と、動物が苦手な人や動物アレルギーの人とがお互い快適に避難生活を送れるよう、事前に調べておきましょう。

また、草の根運動的ではありますが、普段から近隣住民と良好な関係を築けるよう、コミュニケーションや飼育マナーに気を配ったり、飼育者間でのネットワークを構築することも、いざという時に役立つかもしれません。

――避難所で人間と同じスペースにペットを持ち込めず、ペット専用の保留所がある場合、ペットと一緒にいたい方は自家用車で寝泊まりをする人もいると聞いたことがあります。
車を避難所にして猫ちゃんと一緒に過ごす際、気を付ける点はありますか?

熊谷:猫ちゃんは寒さや暑さに敏感です。車内で過ごす場合、夏は熱中症、冬は一酸化炭素中毒に注意してください。

夏場は水分補給と日除けをしましょう。冬場は寒いからといってヒーターを付けたまま寝るのは危険です。
アクセルを踏み込んで排気ガスが車内に充満したり、積雪がある場合、雪で排気管が覆われてガスが逆流してしまいます。

就寝時は毛布や寝袋で暖をとってください。また、狭い場所ですので、エコノミー症候群にも注意です。猫ちゃんだけでなく、飼い主さんの健康にも気をつけてください。