左から 瀬奈じゅん、春野寿美礼 撮影:西村康 左から 瀬奈じゅん、春野寿美礼 撮影:西村康

19世紀末に生き、ハプスブルクの美神と賞された美貌のオーストリア皇后の生涯を描いたミュージカル『エリザベート』。ウィーンで生まれ、日本でも上演を繰り返すこの人気作品で今年、ヒロイン・エリザベートに扮するのは春野寿美礼、瀬奈じゅんのふたりだ。ともに元宝塚トップスターであり、特に花組では、春野がトップスターだった時期に瀬奈が二番手スターだったという関係でもある(瀬奈はその後、月組トップスターとして活躍)。4月中旬、現在稽古真っ最中というふたりに話を訊いた時も、息の合った和やかな空気の中、内に秘めた強い意気込みを語ってくれた。

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日本では宝塚版と、今回上演される東宝株式会社製作の東宝版、2バージョンで上演されているこの作品。春野は宝塚時代に自身のトップスターお披露目公演として、また瀬奈は宝塚版で三たび3役、この作品に関わっている。だが、今回東宝版初参加となる春野は「宝塚の『エリザベート』と、今回出演する『エリザベート』は、私の中ではまったく違うもの」と話し、今回の出演に関しては「自分が演じるとは考えてもおらず、もう観客として作品を楽しむ側だと思っていたので、とても新鮮でした。多くの方に支持されている作品ですので緊張感ももちろんありますが、ちゃんと作品の中に入っていって、作品の良さを味わいながら挑みたい」と語る。

一方、前回2010年公演に続きエリザベートを演じる瀬奈も「慣れてはいけないなと思っている、というのもありますが、実際に何度やっても慣れません」と話し、「やるたびに新鮮で、その都度感じるものがあります。すごく苦しいのですが、自分を成長させてくれる作品。人ひとりの生涯を演じるのですから、苦しまなければいけないですよね」。

ほぼ全編、楽曲で構成されているこのミュージカルは、段取りごとも多い。初参加の春野は「あれもやりたい、これもやりたい! と思うんですが、それが段取りに追われて追いつかず、もどかしく思うこともあるんです」と苦労を口にする。だがその春野の姿を、瀬奈は「春野さんは、常に全力で取り組んでいるのだと思うのですが、そうは見えないところがすごい。そのゆったりしている感じが、高貴な役柄に似合っているの」とニッコリ。逆に春野は「とにかくすべてをお手本に、参考にしています。でも前回演じたからと安定しちゃっているわけではなく、常に新鮮な感覚をキャッチしようとしている姿勢が素敵」と瀬奈を評した。そんなふたりに自身が目指すエリザベート像を問うと、ともに稽古を積み重ねた中で生まれるものを大切にしたいとしつつも、「孤高でありたい」と口を揃えた。作品誕生20年目の節目を迎える2012年版『エリザベート』、ヒロインふたりは現在、自身と闘い、切磋琢磨し、さらに高みを目指している。

公演は5月9日(水)から6月27日(水)まで東京・帝国劇場にて。チケットは発売中。その後福岡、愛知、大阪でも上演される。