『RADWIMPSのHESONOO Documentary Film』の朝倉加葉子監督

独特の歌詞や音楽性で多くのファンを魅了するロックバンド、RADWIMPSに密着したドキュメンタリー映画『RADWIMPSのHESONOO Documentary Film』が公開中だ。デビュー10周年の節目を迎えた昨年、5か国を巡った海外ツアー、帰国後に行った豪華アーティストとの胎盤(対バン)ツアー、そしてアニバーサリーの集大成として12月23日に、幕張メッセで約3万人動員の単独公演を敢行した彼らの“激動の3か月”をつぶさに見つめた、新進気鋭の朝倉加葉子監督に話を聞いた。

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「基本的に全て撮影させてくれて、打ち合わせや楽屋での様子、ライブ本番直前まで、カメラを向けていて。撮っていないのは、着替えくらいですね。特に最初のうちはお互いが『常に撮られている』『常に撮っている』という状況に慣れるように意識的にいつも撮影していました。彼らと彼らを取り巻く人々、ファンの皆さんを含めたRADWIMPSという事象に、全身で向き合いました。もちろん、脚本もありませんから、何が起こるか分からない日々。でも、彼らはそんな日々を10年間積み上げてきたんだと思います」(朝倉監督)

本来、盛大に祝うべきデビュー10周年だったが、海外ツアーを目前に控えた昨年9月、ドラムの山口智史が病気を理由に無期限休養を発表。急きょオーディションで見出したサポートドラマーを帯同し、翌10月にはソウル、パリ、ケルン、ベルリン、ロンドン、台北へと旅立った。映画はバンド史上最大の危機と向き合い、絶望ともいえる喪失感を乗り越えるメンバーの姿にも光をあてる。

「彼らが智史さんの不在をどう乗り越え、進むのか。確かにこの3か月は特別な時期だったと思うんですが、それでも端的に美しく清々しい日々だった……。というのが、私の目に映った真実でした。RADWIMPSのメンバーは皆、音楽活動に対して大きなビジョンと、高い理想を掲げている。自分が生み出す音楽に対する信頼の強度も非常に高いですし。そんな姿が周りの人々やファン、何より彼ら自身にとって希望であると思います。音楽と映画では、表現方法も制作体制も違いますが、それでも彼らの志の高さには、同じ作り手として刺激を受けました」(朝倉監督)

■朝倉加葉子監督プロフィール
東京造形大学卒業後、TV制作会社勤務を経て映画美学校を修了。2013年に初長編となる全編アメリカ撮影の映画『クソすばらしいこの世界』が公開された。また、同年の短編『HIDE and SEEK』は世界30か所以上の映画祭で上映された。ほかにアイドルグループ・ゆるめるモ!が主演する『女の子よ死体と踊れ』(15年)。4月9日には『ドクムシ』の公開を控えている。

『RADWIMPSのHESONOO Documentary Film』
3/24(木)まで限定公開中

取材・文・写真:内田 涼