次世代ゲームの最有力機「PSVR」を一足先に体験

10月に発売が決定した「PlayStation VR(PSVR)」。4万4980円という価格設定がライバル機と比較すると手頃ということもあり、VR体験普及を後押しする存在になるのではないかと各所で期待を集めている。

「PSVR」は「PlayStation 4(PS4)」と連携が必須のVRヘッドセット。PS4本体だけでなく、VRヘッドセットの動きを検知するために「PlayStation Camera」を用意する必要がある。すべてのデバイスを同時に購入するとなると負担が大きいが、「PS4」と「PlayStation Camera」をすでに所有しているユーザーなら、最小限の投資でVR体験をスタートすることが可能だ。

発売時の同梱物は、VRヘッドセット、プロセッサーユニット、VRヘッドセット接続ケーブル、HDMIケーブル、USBケーブル、ステレオヘッドホン、電源コード、ACアダプタ。

●見た目より軽い「PSVR」、装着感も快適

今回のメディア向け体験会では、デバイスの接続方法からレクチャーを受けた。まず「PS4」と「PSVR」の接続だが、これにはプロセッサユニットを経由する必要がある。プロセッサユニットのサイズは幅143×高さ36×奥行143mmで、重量は365g。テレビ台の上に乗せられる程度のコンパクトなデバイスだ。PS4を小型化したようなデザインで、HDMI×3/USB/AUX端子を備える。PlayStation Cameraもこのユニットを経由して接続する。カメラはテレビ上部の中央にクリップで設置する。

VRヘッドセットのサイズは幅187×高さ185×奥行277mm(ヘッドバンド長さ最短時)で、重量は610g。手に持つと見た目より軽い印象。装着してもずっしりと頭部にのしかかってくることはなかった。眼前の5.7インチディスプレイはOLDE方式を採用。解像度は1920×1080で、左右それぞれで980×1080となっている。

装着後は最初にディスプレイと目の距離を調整してピントを合わせる。近づけすぎると間にあるレンズに目がぶつかってしまうが、遠すぎると鼻周辺に隙間が発生して没入感が損なわれてしまう。ベストな位置を見つけるには、少しだけ慣れが必要かもしれない。眼鏡を着用した状態でも装着は可能だ。

次に後頭部付近にあるヘッドバンドのダイヤルを使って、頭部全体にフィットさせる。締め付けすぎるとゲームプレイ中に痛くなってくるので注意。VR体験を十分に楽しむには快適性と没入感の維持が不可欠なので、装着バランスは極めて重要な要素だ。

サウンドはヘッドホンもしくはイヤホンで聴く。付属しているが、手持ちのヘッドホン、イヤホンにも対応する。VRヘッドセットが耳元で装着の妨げになることはなかったが、あまり大型のものだとヘッドセットと相まって重さが気になってくる。軽量モデルがおすすめとのことだった。

センサは6軸検出センサ(3軸ジャイロ・3軸加速度)を採用。カメラはVRヘッドセットの前面と背面の青く点灯したランプに反応する。同色のランプが灯ったPS4のコントローラーも認識の対象だ。

●多彩なジャンルのコンテンツ満載、多人数プレイ可能なゲームも用意

今回の体験会には、すでにVR体験がある筆者だけでなく、VR初体験の「BCNランキング」の細田編集長が同行。数十年ぶりというテレビゲームに没頭してもらった。

VRはまさに“百聞は一見に如かず”の体験だ。冒頭に体験した深海を探索するシンプルなデモコンテンツからすでに「想像以上のリアリティ」ともらす細田編集長は、上下左右を見回し、ディティールまでつくりこまれた世界に感心した様子。

「PSVR」のコンテンツは、プレーヤーの視界がそのままテレビに映し出されるため、周囲で見守る側もコンテンツ(とプレーヤーの反応)を楽しむことができる。デモが進み、美しい幻想的な光景から一転、暗闇に支配された恐怖の深海に様変わりすると、細田編集長も心もとない表情に。突然、サメが飛び出してくる場面では思わず体をのけぞらせていた。

感嘆や恐怖のリアリティだけがVRの魅力にはあらず。エクシングのカラオケ「JOYSOUND」をVR化した「JOYSOUND VR」では、アイドルユニットに交じってライブに参加にすることができる。もちろん観客サイドではなく、歌い手としてである。再現するのは舞台上だけではない。なんとコンテンツはライブ前の楽屋からスタート。メンバーに声をかけられる演出も憎い。もうこの時点で自分がメンバーの一人であるような錯覚を覚えるほどだ。

本編のライブパートでは、正面よりやや下に歌詞が表示されていた。曲の進行に合わせて文字色が変化するのは通常のカラオケのままだ。メンバーといっしょにダンスをするもよし、歌に没頭するもよし。オンステージの高揚感は、目の前にリアルの観客がいることでさらに高まる。3Dデータではなく実際に撮影した映像を元にしているため、臨場感は凄まじい。PS4のメインターゲットである男性層だけでなく女性層も虜にしそうなこの発想が、まさにVRコンテンツの受け皿の広さを象徴している。

最後に本体購入時にセットで付いてくる「THE PLAYROOM VR」というコンテンツを紹介しよう。PS4発売時にもカメラと連携するARゲーム「PS4 PLAYROOM」というコンテンツが登場したが、これはそのVRバージョン。おまけかと思いきや、搭載しているミニゲームはどれもVRの魅力がつまったものばかり。VRヘッドセットを装着していないプレーヤーも画面を眺めるだけでなくゲームに参戦することができる点がおもしろい。

例えば、VRヘッドセットを装着したプレーヤーがネコ、非装着プレーヤーがネズミ(最大4人)となりチームに分かれて競う「Cat&Mouse」。

ネズミはネコの目を盗んで床に散らばったチーズを集め、ネコはカーテンに隠れながらちょこまかと動き回るネズミを捕まえる。要はVRを利用した「だるまさんがころんだ」だ。

VRヘッドセットの画面とテレビ(非装着プレーヤー側)に映る視点がそれぞれ異なるので、同じ場所にいながらフェアかつ白熱した対戦が楽しめる。“VR”もあくまで“ゲーム”の新しいカタチと捉えるPlayStaitionだからこそ生まれたプレースタイルといえるだろう。

VRゲームはオンライン対戦にも対応予定。オフラインだと上記の方法以外にはまだ対応タイトルは発表されていない。現在の性能だと「PS4」一機で使用できる「PSVR」は一機に限られるということだ。今後どのように“ゲーム”としての“VR”を盛り上げていくのか気になるところだ。

発売まであと半年。すでにPSVRのコンテンツ制作に230社以上が名乗りを上げ、160本以上のタイトルを開発中、16年末までには50本以上の発売を目指す。ソフトウェアの拡充に期待しながら、そのときを待ちたい。(BCN・大蔵 大輔)