テラドローン設立の経緯を説明する徳重社長

テラモーターズは3月16日、ドローンを使ったサービスを提供する新会社、テラドローンを設立し、3月下旬から事業を開始すると発表した。テラモーターズの徳重 徹代表取締役社長が代表を務める。

新会社のテラドローンは、ドローンの販売ではなく、ドローンを使ったサービスやシステムの提供と、システムに合ったドローンの開発を行う。第一弾として、ドローンで撮影した撮影データを活用した3D土木測量サービスを始める。測量、土量管理、工事の進捗管理などを行うもので、3月下旬から提供する。

●今後成長が期待できるドローンはホビーではなく法人向け

2010年に創業したテラモーターズは、電動二輪や三輪というEV事業を展開してきた。国内だけではなく、アジア市場向けにも販売し、いまや売り上げ全体の95%が海外の売り上げだという。インド、ベトナム、バングラデシュに工場を構え、年間で3万台を販売する。

徳重 徹代表取締役社長は、「EV事業は成長の目処がついたので、半年ほど前から新しい事業を考えていた。次の成長戦略として、空のEVと呼ばれるドローン事業を始める」と、新会社設立の経緯を説明した。

何かと話題になることが多いドローンだが、徳重社長は「ドローンといえば、仏のパロット、米の3DR、中国のDJIの3社が思い浮かぶだろうが、この3社のメインはホビー向けのハードウェアビジネスだ」と解説する。

さらに「ドローンはPCのようにハードウェアとソフトウェアの二つで成り立つ。(日経BPクリーンテック研究所の資料によると)ドローンの市場は今後拡大し、2030年には国内で1000億円の市場になると予想される。しかし、そのうちのハードウェアの占める割合は1割程度だ。今後急成長が予想されるソフトウェア市場だが、まだ圧倒的プレゼンスを持つ会社はない。ここを狙う」と徳重社長は意気込みを語る。

徳重社長は「5年前まで日本のドローンが世界で一番進んでいた。無人機による農薬散布の実績は日本が一番だった。ところがいまや日本は世界に大きく後れをとっている」と警鐘を鳴らす。「ドローンを使ったサービス、システムでは農薬散布、点検、在庫管理、またはAmazonが発表した宅配サービスもあるだろう。そのなかでまず高精度の土木測量から始める」と話した。

●建設現場で抱える問題とドローンの課題

建設の現場でも高齢化が進んでいる。少子高齢化による労働者不足、若い世代を確保できない難しさ、熟練労働者の離脱といった大きな問題を抱えている。また、高度経済成長期につくられたトンネル、道路、橋などのインフラの劣化進行もあり、効率化は急務だ。そこでドローンを使った測量を取り入れると、従来の光波測量に比べ、時間で10分の1、コストで5分の1に抑えることができる。

だが、ドローンによる測量では大きな課題がある。それが精度だ。土木の現場では工事費用を左右する日々の切土・盛土の土量を数cm単位で正確に把握することが非常に重要。しかし、ドローンを用いた既存の方法では、全体の面積のうち80%以上の地点で20cm以上の誤差が生じてしまう。

テラドローンは、ドローン測量の実績を持つリカノスから同事業を譲り受け、この課題をクリアした。「リカノスはこれまで100回以上の測量を実施、大手ゼネコンからも受注した実績を持つ。さらにドローン測量の誤差は5cm位内と他社と比べて圧倒的な高い精度を持つ。ドローンを使った土木測量を行う会社は多数あっても、100回以上の実績、誤差5cm位内の高い精度を持つ会社はほかにはいない」と徳重社長は自信を見せた。

今後は全国各地に均一的にサービスを展開していく方針で、東京、仙台、山形、神戸の4か所に拠点を設ける。「地元の測量会社などと共同で行っていきたい。現場の声をしっかり聞き、ノウハウを蓄積していく。その後は海外に展開していく」と徳重社長は今後の方針を語った。なお、ドローンの測量費用は、広さなどによって変わるが「1回70~100万円ほど」という。(BCN・山下彰子)