日伊国交樹立150周年記念リッカルド・ムーティ指揮日伊国交樹立150周年記念オーケストラ公演より 写真提供:東京・春・音楽祭実行委員会/撮影:青柳聡 日伊国交樹立150周年記念リッカルド・ムーティ指揮日伊国交樹立150周年記念オーケストラ公演より 写真提供:東京・春・音楽祭実行委員会/撮影:青柳聡

毎年春の訪れとともにやってくる「東京・春・音楽祭」が3月16日、東京文化会館での「日伊国交樹立150周年記念オーケストラ」公演で華やかに幕を開けた。

リッカルド・ムーティが率いるのは、日本とイタリアの若い奏者たちの合同オーケストラ。7月にはイタリアのラヴェンナ音楽祭にも出演する。若い息吹がそのまま伝わってくるようなストレートな音楽表現が小気味いい。

開演前にはセレモニーも執り行なわれるなど、音楽祭初日に日伊友好が重なって祝賀ムード満載なのだが、公演の中身はお祭り気分ではなかった。前半のヴェルディ・オペラ名曲集は、しばしばカットされる《マクベス》のバレエ・シーンの音楽をはじめ、《ナブッコ》の1幕の合唱や《アッティラ》のバスのアリアなど、随所にただならぬこだわりを感じさせる選曲眼。そして後半は、日本では滅多に上演されないであろうボーイトの歌劇《メフィストーフェレ》のプロローグまるごとというエッジの効いたプログラム。さすがムーティ。130人編成の東京オペラシンガーズの迫力は圧倒的。バスのイルダール・アブドラザコフともども、声の「圧」にけおされる心地良さを満喫させてくれた。

音楽祭は4月17日まで1か月間。室内楽からオペラまで、さまざまな注目公演が目白押しだ。

「東京のオペラの森」としてスタートした音楽祭だけに、オペラ公演は目玉のひとつ。恒例のNHK交響楽団のワーグナー・シリーズ(演奏会形式)は《ジークフリート》。今年、満を持してバイロイトの『指環』を任された当代きってのワーグナー指揮者マレク・ヤノフスキの、ドイツの正統を感じさせるワーグナーに期待が集まる。ベリオ、ブーレーズ、ベートーヴェンの室内楽を並べて聴くという、刺激的な「ポリーニ・プロジェクト」(2夜)も聴き逃せない(リサイタルで来日中のポリーニ自身は出演しないので注意)。

大物アーティストが居並ぶこうしたコンサートホールでの公演の一方で、動物園内で聴くリアルな《動物の謝肉祭》や、春の陽光が降り注ぐ上野公園でオーケストラを相手に指揮者体験を味わえる参加型イベントなど、上野界隈を中心に多数開かれる無料コンサート「桜の街の音楽会」もこの音楽祭ならでは。コアなクラシック・ファンはもちろん、子供連れのファミリーやデートのニーズにも、懐深く対応してくれる音楽祭だ。桜とともに音楽も満開。さあ上野へ!

取材・文 宮本明