もし子どもがいなかったら、あなたの一生はPTAという言葉とは無縁だったかもしれません。ひとたび、子どもが生まれたら、遅かれ早かれ、PTAと関わらなくてはならない局面が訪れるでしょう。

しかし、実際にPTAの活動をのぞいてみると、これって本当に必要なの? と首をかしげたくなるような活動も少なくありません。

最近では、PTA加入は任意なのだからと、不加入を選択する保護者も出てきました。ですが、任意とはいえ、 強制に近い形で加入を迫られたという話も聞きます。また、加入したくなくても、子どものことを考え、 踏みとどまる保護者もいるでしょう。

いずれにしても、PTAのことになると、 好意的に思えない人がほとんどなのではないでしょうか。

そんな悪名高いPTAですが、それでも今現在存在しているのですから、それなりの意義があることも確かなようです。

問題なのは、PTAそのものではなく、より時代に適応したPTAに変えていくアクションを取れる人が少ないことなのではないでしょうか。

PTAのトリセツ ~保護者と校長の奮闘記~』(今関明子・福本靖 共著/世論社 刊)は、神戸市立本多聞中学校で実際に起きた、 保護者と学校側によるPTA改革の記録です。

学校運営に保護者が参加するという逆転の発想は、きっと全国のPTAに悩まされている保護者や学校関係者の目からウロコを落とさせるはずです。

理想を掲げ、覚悟を決める

著者の一人である今関明子さんは、2男1女の保護者です。

小学校でPTA会長を務めた後、福本靖校長が娘さんの中学校に赴任してきたことを きっかけに、 今関さんは中学校でもPTA役員を務めることを決めます。

この福本校長が、PTAに改革の意識を吹き込んだ張本人です。

今のPTAには問題点があり、保護者に受け入れられていないという認識で一致していた学校側と PTA側は、改革に向けての意識調査のため、保護者にアンケートをとることにしました。

福本校長と今関さんたちには、すでに目指すPTA像が見えていました。それは、 「保護者と先生方が生徒を中心に据え、意見を述べ合い、学校運営に参加する」というものです。 そのためには、一部の保護者の意見だけで総意とせず、出来るだけ保護者の回答率を高めるように工夫をしました。

大がかりなアンケートを取ったのだからもう後戻りはできないと、PTA役員も校長も、腹をくくったのですね。

それって、ホントに子どものため?

アンケートでは、「 あなたがPTA役員に選出されたとして必要だと思う活動に◯を、どちらでもよいものに△を、必要だと感じないものに×をつけてください」といった風に、保護者をPTA側に巻き込んだ質問内容にしたそうです。

「もし自分だったら」と考えて質問に答えるとき、人はより当事者としての意識を持つのではないでしょうか。

その結果、廃止、見直しになったものが半数以上出ました。

改革のポイントとなったのは、次の3点です。

  • 活動は誰のためのものか?
  • 子どもにすぐ反映される活動か?
  • 他にもっと簡素化する方法はないか?

今関さんは、「正直、今までやって来た活動を削減することにはかなりの勇気を要した」と言っています。OBや地域との兼ね合いを考え、気が引けることもありましたが、すべては実質的なPTA活動のため、と覚悟を決めたそうです。