左から、中込健太、船橋裕一郎、前田剛史 左から、中込健太、船橋裕一郎、前田剛史

太鼓を中心とした伝統的な音楽芸能に無限の可能性を見出し、現代への再創造を試みる太鼓芸能集団「鼓童」。1981年にベルリン芸術祭でデビューし、以来47か国5,600回を越える公演を行ない、今年35周年を迎える。

鼓童 公演情報

その鼓童がこの夏に上演するふたつの作品について、鼓童代表・船橋裕一郎と中込健太、『若い夏』の演出を担当する前田剛史に話を聞いた。

鼓童創立35周年を記念し、8月18日(木)~20日(土)に東京・サントリーホールで上演する『鼓童創立35 周年記念コンサート』。指揮者・下野竜也と新日本フィルハーモニー交響楽団を招いた「第一夜 ~出逢い~」、芸術監督・坂東玉三郎との出会いによる舞台創造を展観できる「第二夜 ~螺旋~」、坂東玉三郎作曲の楽曲による鼓童の演奏会、Dance×男子新体操のプロ集団・BLUE TOKYO、ダンスカンパニー・DAZZLEとのコラボレーションでおくる「第三夜 ~飛翔~」という三夜連続の特別なプログラムだ。

第一夜の演目は「1976年から演奏してきた『モノプリズム』や新作2曲も演奏します。僕自身、初めてオーケストラと演奏したときは違和感がありましたが、その違和感から溶け合う瞬間が味わえると思います」(船橋)

第二夜は、歌舞伎俳優・坂東玉三郎が芸術監督に就任して約4年となるが「玉三郎さんが芸術監督になられてから新しい作品をどんどん発表していったので、その中で生まれた楽曲を新しい演出でまた構築して、ここ数年の鼓童の変遷が見えるような内容になると思います。(玉三郎さんは)前日まで構成を変えていくのでそういう姿勢やこだわりは勉強になりますね」(中込)

第三夜のコラボレーションは「2年前に共演したとき、終わった瞬間に『もう一度やろう!』と話しました。(一緒に)新たな曲にもチャレンジしたくなって、次に進みたいなと思える出会いでしたね」(船橋)

7月1日(金)~3日(日)に東京・浅草公会堂で上演する鼓童浅草特別公演『若い夏』は、若手メンバーが主になった公演。演出を担う前田は「昨年まで玉三郎さんが演出されていた公演を、若手で演出のキャリアも浅い自分がやらせていただくことになったときに、単純に自分がやりたいことを表現するだけではだめなんじゃないかなと考えました。今回は若いメンバーが集まるので、『自分たちは前には進んでいるけど、後ろを知らないのではないか、だから知ってみよう』と一度全部を見直し、この先僕たち若手が大切にすべきものをみんなで考えて作っていきたいです」と意気込みを語った。

「この節目の年に、過去を振り返りつつも今出せる一番いい音を出していきたいなと思います。太鼓って生音で体で感じるのが一番なので、ぜひ観に来てください」(船橋)

取材・文:中川實穗