ドコモ・ヘルスケアの和泉正幸代表取締役社長

成長著しいウェアラブル市場。ウェアラブルといってもその形状、機能はさまざまだ。なかでも一番身近なのが活動量計だろう。ドコモ・ヘルスケアが3月25日に活動量計の新モデル「ムーヴバンド3」を発売する。そこで、同社の和泉正幸代表取締役社長に新製品の狙いやウェアラブル市場の現状について話を聞いた。

●腕時計型が主流のウェアラブル市場、今後はさらに成長が続く

日本のウェアラブル市場は2015年度で134万台、2020年度には573万台に成長すると言われている(2015年2月、MM総研調べ)。形状は腕時計、メガネ、バンド、ペンダント、指輪とさまざまだが、現在から2020年度にかけての主流は腕時計・リストバンド型だという。

腕時計・リストバンド型というと、スマートウォッチをイメージする人も多いだろう。腕時計・リストバンド型は、電話、メールの確認、音楽の再生など多彩なことができるスマートウォッチだけではなく、歩数や移動距離などを計測するヘルスケア用の活動量計もある。「ムーヴバンド3」がまさにそれだ。

活動量計というと難しそうだが、高機能な歩数計のようなものだと思えばいい。歩数計は基本的に歩数をカウントするだけなのに対し、活動量計は、歩数に加え日常的な活動の状況や睡眠の状態などを、各種センサで測定し、記録していく。取得したデータはスマートフォンに転送し、スマホのアプリで保存、管理ができる。

●ユーザー構成比は男女半々、年齢層も幅広く

ドコモ・ヘルスケアが「ムーヴバンド」を発売したのは2014年1月のこと。すぐにブラッシュアップした「ムーヴバンド2」を同年6月に発売した。「ムーヴバンド2」は好調で、累計で5万台強販売したという。

ドコモ・ヘルスケアは、NTTドコモとオムロン ヘルスケアとのジョイントベンチャー。オムロン ヘルスケアの技術力とNTTドコモの販売力をフル活用している。実際、「ムーヴバンド2」は全国のドコモショップ、ドコモオンラインショップで販売し、幅広い層のユーザーを獲得した。3月25日に発売する「ムーヴバンド3」はその後継。2年ぶりの新モデルで、ドコモショップ以外でも販売する予定だ。

和泉社長は、「ウェアラブルというと、ユーザーはガジェット好きの男性が多いイメージだが、ムーヴバンドは男女半々。さらに女性の方は、若い人から年配の方まで幅広く使っていただいている」と話す。

●オンでもオフでも使えるさりげないデザイン

「アスリート向けというイメージも強いウェアラブルだが、日常生活の場面で、ぜひ一般の人に使ってほしい。そのため、いつでも装着できるよう自己主張をしないさりげないデザインにした。スーツでもカジュアルなスタイルでも違和感はない」と和泉社長は説明する。

和泉社長の言葉通り、シンプルでさりげないデザイン。前モデルに比べてベルトが細くなっており凹凸がない。装着するとウェアラブルというより、女性向けのおしゃれな時計のように見える。新モデルから液晶ディスプレイを搭載したため、実際に時計の代わりにもなる。もちろん歩数や燃焼カロリーなどを表示することも可能だ。あらかじめ一日の活動量の目標値を設定しておけば、手元にスマートフォンがなくても達成度合いが分かるのでより便利になった。生活防水なので、雨や水仕事など日常的な水濡れは気にしなくていい。

日々の活動量を記録するため、ほぼ丸一日手首に着けることになるわけだが、そこで気になるのが着け心地だ。実際に着けてみると手首を圧迫することはなく、擦れて肌を傷つけることもなさそう。またこれから暑くなると気になるのが汗やムレ。ベルト部分は前モデルのゴム素材からシリコン素材に変更し、柔らかさはそのままに、さらりとした感触に仕上がっており、夏でも快適に使えそうだ。ベルト穴に留め具をパチンとはめるだけで簡単に装着できる。Sサイズの付け替えベルトも付属するので女性にもぴったりだ。

このほか、これまでは手動だった活動と睡眠の切り替えが自動になったり、スマートフォンへのデータ自動転送、早歩きやジョギングの計測にも対応したりと、より活動量計としての機能を向上させた。

●今後の活動量計、ウェアラブルはどのように変わるのか

ウェアラブルが登場した頃、ついに映画や小説の世界が現実になるのかと思ってわくわくした。リストバンドでテレビ電話ができ、地図が確認でき、ピアスや、はたまた身体に埋め込んだチップで位置情報が分かり、買い物ができる……。しかし実際はどうなっていくのだろうか。最後に、ウェアラブルの進化の方向性について和泉社長に話を聞いた。

和泉社長は「身につけていることを意識させたくないのなら、今後どんどん小さくなっていくでしょう。でもヘルスケアの分野では逆です。着けていることを意識してほしい。ムーヴバンドを装着し、身体のいまの状態が分かることで、健康に対する関心が高まり、健康のためにもうちょっと歩こう、もうちょっと頑張ろうという気持ちに、きっとなるはずです。この気持ちを持ち続けることで健康に近づいていく。多くの人が健康になろう、という意識を持ってくれれば」と語る。

現在、計測したデータを保存、管理する専用アプリが集めた活動量に関するデータを使って、定期的に健康や身体に関するレポートを公開している。例えば2015年の年末には、体重、睡眠、歩数の変化に関する分析を行い、お正月太りに関するレポートを公開した。「このような広報活動を続けながら、今後はフィットネスクラブや自治体、企業とコラボレーションして健康をサポートするお手伝いもしていきたい」と和泉社長は語る。(BCN・山下彰子)