三宅純 (撮影:星野洋介) 三宅純 (撮影:星野洋介)

2009年に急逝し、世界中のファンの悲しみを誘った舞踊家ピナ・バウシュ。その軌跡を映像と音楽で綴る、『ピナ・バウシュ トリビュート特別追悼公演』が、6月30日(土)、ピナの命日に新宿文化センターで行われる。生前ピナと親交を持ち、追悼公演に出演が予定されている作曲家、三宅純に公演の見どころとピナ・バウシュの魅力について話を訊いた。

「ピナ・バウシュ トリビュート」チケット情報

以前からピナのファンであったという三宅は、2004年頃、ヴッパタール舞踊団の音楽監督から楽曲提供の依頼があり、その年に来日したピナと出会ってから交流が始まった。今年2月に公開された映画『Pina/踊り続けるいのち』では、ピナが2006年に発表した舞台『フルムーン』の中で、三宅の楽曲『Lilies of the valley』が映画の象徴のように使用されている。

ピナが作品を創る制作過程は「何が完成するのかわからない刺激的なものだった」と三宅は語る。「ピナは山のような質問をダンサーに浴びせて個性を引き出し、最終的に編集します。ダンサーとの対話に時間をかけるため、身体表現が固まるのは初日ギリギリで、それまでは音楽がついていないことがほとんどです」。三宅はリハーサルを見ること無く、カンパニーサイドからの簡単なキーワードとヒントを基に楽曲を作ったこともあるそうだ。それでも「ピナとコラボレーションができるのは嬉しかった」と当時を振り返って話す。

三宅から見たピナの素顔は「物静かで多くを語りませんが、その目はいつも人を見通すように見ていました。彼女の作品は人の魂を裸にするようなもので、言葉では表現できない感覚や感情を(舞台を通して)伝えられる稀有な表現者だと思います」と穏やかな口調の中にも、ピナへの深い思いが伝わってきた。

ピナ・バウシュの命日に、来日公演で使われていた新宿文化センターで開催される追悼公演。「音楽の捧げものとしてピナに届くような、コンサート単体として成立するものを考えています。映画のエンディングロール『The here and after』を歌っているリサ・パピノーも出演します。前半はレアなフィルム、できればピナ本人のダンスが観られるものを選んで上映したいと思っています」と公演への意気込みを語った。

その生涯をかけて、言葉を要さない芸術を追求してきたピナ・バウシュ。知られざる彼女の姿が見られる特別な公演となるだろう。

取材・文:高橋恭子