今の子どもたちは、今の社会をつくってきた価値観がことごとく崩れ始める時代に生まれてきています。終身雇用制が崩れ、ジェンダー観が崩れ、さらには家族観までが崩れてきています。

これからの子どもたちには、よりタフさが求められると言っても言い過ぎではないかもしれません。ですが、子どもたちにサバイバル力を身につけさせられるよう、親や既存の教育が導けるかどうか、疑問を感じる人も多いのではないでしょうか。

今回ご紹介する齊藤孝さん監修の『ヤワな大人にならない! 生き方ルールブック』は、これから大人になる子どもたちに、強くしなやかに人生を生きるためのヒントが詰まった1冊です。

齊藤孝さんは「現代は物事が変化するスピードがとても早く、自分で判断する力が求められる時代」と前書きで書いています。

そんなハードな時代を生き抜くキーワードは、「ヤワな大人にならない!」本書には、齊藤さんがセレクトした生きるためのヒントが、明快なイラストとともに50も紹介されています。

親は完璧ではありませんから、親がすべて教えることは、到底無理な相談です。また、学校にすべてを期待するのも酷です。

生きづらささえ感じる時代でも、悩みや不安を人のせいにせず自分の力で人生を突き進んでいくために、親子で楽しめる本書はきっと、なんらかのヒントになるはずです。それでは、子どもに伝えたい生きるヒントのなかから、いくつかご紹介していきましょう。

迷いや不安があっても、自分で決める

劇作家・演出家の鴻上尚史さんの最近のツイートで、 こんなものがありました。

子役のオーディションをしていると、水筒を持っているのに全く口をつけない。飲んでいいと言うと一斉に飲む。「まさか、君達、小学校じゃあ先生が飲んでいいと言うまで飲んじゃいけないの?」と聞くと全員がうなづいた。身体の声に従わず教師の声に従う。これが教育なのかと暗澹たる気持ちになる。Twitterより

21世紀になってからもう19年もたつというのに、学校教育というのは、基本的に子どもを管理するというスタンスに立っているんだな、ということがわかって、がっくりきます。

2020年から国の教育改革の影響で、教育が変わると言われています。

言われたことをちゃんとできる子よりも、自分で考えて行動できる、非認知能力の高い子どもを育てることが目標と謳われていますが、現状がこの状態なのに、いきなり子どもたちは変わることができるのか、不安は残ります。

トイレに行ってもいいですか、水を飲んでもいいですか、と許可を求めることばかりに慣れてしまったら、いざ大きな決断、たとえば進路を決める際などに、自分で決めることをせずに外側に答えを求めてしまうのではないでしょうか。

迷いや不安があるのは、人間ならばある意味、当たり前です。それでも、進むべき道は自分で決める。そんな子になってほしいではありませんか。

たとえ自信はなくても、自信があるように行動してみる

何事にも自信がなくて、チャレンジできない。出来るようになったらやってみたいけど・・・こんなスタンスでは、いつまでたってもチャンスは訪れません。

最初から自信のある人なんていないのです。大切なのは、実際に自信があるかどうかではなく、自信があるように見せられるかどうか。ウィリアム・ジェームズというイギリスの哲学者は、「幸せだから笑うのではない、笑うから幸せなのだ」という言葉を残しています。

たとえ自信がなくても、まず背筋を伸ばして大きな声を出してみましょうと本書は提案しています。まるで自信のある人のように! 誰も本当はどうかなんて、気にしていないのですから。

子どもを導くには、いちばん近くにいる親がお手本を見せることです。子育てに自信ないという人は多いですが、自分の子育てに根拠がない自信を持つことは、子どもにとって悪いことではないと思いますよ。

ただし、「強がり」と「勇気」は別物です。本当に勇気のある人は、自分の欠点から目をそらさず、乗り越えていける人のことです。その違いも一緒に子どもに伝えられるといいですね。